『デジタル監視社会にどう抵抗するか―ビッグテックとの闘い―』5月5日、NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表の内田聖子(しょうこ)さんが大阪市内で講演した。主催は、戦争あかん! ロックアクション。「ビックテック」とは世界規模で支配的な影響力を持つ巨大IT(情報技術)企業群の通称。 グーグル、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフトなど。
「キーワードは監視資本主義」と内田さんは話し始めた。今や私たちの生活に浸透し気軽につかっているSNSやネット通販だが、膨大な個人情報がビッグデータとして蓄積されている。
当初は小さな検索エンジンの企業として登場したグーグルは巨大企業に成長し、寡占状態。グーグルが「無料」の代わりに集めるデータは、アプリ、ブラウザ、デバイスに関するあらゆる情報、ユーザーの行動に関する情報。それは検索ワード、再生動画、ユーザーが作成したコンテンツ、他のユーザーから受け取ったコンテンツ(メール、写真、動画、文書、メタに投稿したコメントまで)などなど多岐にわたる。
グーグルが日本市場に占めるシェアは95・92%(スマホに限れば99・58%)。広告企業は検索で上位に位置するためにグーグルに従属するようになる。
クレジット決済やスマホ決済が当たり前になれば、使えない人、使いたくない人はデジタル社会から排除される。マイナンバーカードに保険証を結び付ける動きがある。今のところ拒否できるが今後は持っていなければ保険証剥奪みたいなことが起きかねない。
デジタル技術全体を全否定するわけではないが、問題は、デジタル技術を誰が所有し、誰がコントロールし、誰が集めたデータを所有するのか。透明性を担保した上で、国や自治体など公共機関が管理・所有すべきだ。
ビッグテックの力はまだまだ強いが、いつまでも続くと思えない。業績が悪いと1000人規模で解雇する経営手法に批判が起きている。アマゾンはカルフォルニア州から独占禁止法違反で訴えられ、フェイスブックもユーザーの情報を勝手に使用していると内部告発された。
公権力に対しても、顔認証への反対運動がある。顔認証技術が普及した米国では、必要もなく移民を取りしまっている。街中を歩いていて映像を勝手に撮られるのは人権侵害だ。19年、サンフランシスコ市は顔認証技術の使用を禁止した。ヨーロッパでも反対運動が盛り上がっている。それに比して日本では抵抗感がない。人権の問題ととらえるべきだ。(池内潤子)