6月2日、前線や台風の影響で、私が働く神戸市内も24時間123ミリという6月の観測史上最大雨量を記録した。この豪雨の中、バイクに乗り訪問介護で走り回った。
1月24日の大雪のときもそうだったが、介護には「先送りにできない介護」がある。排泄はわかりやすい例だが、認知症の高齢者の場合「買い物代行」もそうなることがある。危険であることが理解できず「○○がない」ということで外へ出てしまうことがあるからだ。特に、外出時に杖を使う方は、地面が滑って転倒する危険性が高い。
そのようなことにならないように、食品やトイレットペーパーなどの生活必需品は普段から切らさないように注意しているが、週1や週2のサービスだと本人が不安になり精神的に厳しくなるので、本人状況を確認するためにもサービスを続行する場合がある。
介護ヘルパーにとってつらいのは、こうした警報が出ている場合の勤務になんら加算手当がつかないことだ。雨ガッパを着てずぶ濡れになり利用者宅を回るのは、普段の勤務より格段に負担がかかる。特に訪問介護の場合は道路事情で移動コースがかわるため、普段と同じタイムテーブルで回るのはむずかしい。結局、移動時間ロスの分、休憩時間が削られることになる。

置き去りに
される人びと

こうした現状は、要介護高齢者と障がい者が災害対策から置き去りにされている現状をあらわしている。
介護を必要とする高齢者と障がい者に災害情報を伝え安全を確保するにあたって、普段接している介護ヘルパーの存在は貴重だ。しかし、今回の大雨の場合でも加算手当が付かない現状で、介護スタッフ全員に災害時の責任を追わせるのは無理がある。結局は私も含めた「有志の奮闘」に頼るしかない。
公的介護サービスは必要最低限の人権と安全を保証するものなので、時間と場所が指定されている場合、そのサービスを止めるのは難しい。普段何気なく街を動いているわれわれヘルパーだが、そうした現実も知ってもらえるとありがたい。
この『介護の現場から』では、こうした関係者以外にわかりにくい「介護ヘルパーの職業特性」について書いていく予定です。(小柳太郎/神戸市、介護ヘルパー)