「やっと私たちの存在が認められた。この社会で生きていいんだと言われた気がした」「差別は差別を生むだけで、他に何一つ生むことはできません。この世に差別されるべき人間は誰一人いないのです」
これは、2017年7月28日、大阪朝鮮高級学校(東大阪市)への「高校無償化」適用を求める裁判(大阪地裁)の一審勝利判決後の報告集会で発言したカン・ハナさん(当時、高校3年生)の忘れられない言葉です。
2010年より施行された日本政府の高校授業料無償化政策から、唯一対象外とされている朝鮮高級学校の10校。うち5校が国を相手に、損害賠償訴訟を提訴しました。70年以上にわたって朝鮮学校を守ってきた在日コリアンと朝鮮学校の生徒たち、弁護士、そして朝鮮学校を応援する人びと。差別に耐え、自分のアイデンティティを守ろうとする在日朝鮮人の生活を追ったドキュメンタリー映画。それが「차별(チャビョル)差別」です。
韓国・プサンを中心に活躍する金知雲(キム・ジウン)監督と金度喜監(キム・ドヒ)督の共同制作です。「朝鮮学校とともにする市民の集いポム(春)」の活動で、韓国の人に、日本の朝鮮学校のことをもっと知ってもらおうと福岡の朝鮮学校と交流する中で、この裁判闘争に出会います。映画は、歴史を無視した日本政府の反人権的な実態をありのまま知ってもらいたいと、無償化問題を軸にまとめられています。教育を受ける権利は、人種と国境を問いません。朝鮮学校の生徒たちの学ぶ権利を、政治の論理で侵害したり、それに沈黙したりすることなく、子どもたちの未来のために足並みをそろえて、共に前へ進んでいけたらと訴えています。
関西では3月末から4月上旬にシネ・ヌーヴォ(大阪市西区)で上映。5月20日から6月9日までアンコール上映されました。6月23日から29日まで、福島県のフォーラム福島(福島市曽根田町7−8)で上映予定です。監督の話と、トーク・ゲストに福永玄弥さん(東京大学準教授)、佐野通夫さん(東京純心大学教授)、蓮池透さん(元拉致被害者家族連絡会事務局長、元東京電力社員)が決定しています。
監督は上映期間中、日本に滞在。朝鮮学校への補助金支給再開、朝鮮高級学校への「高校無償化」即時適用を求める大阪府庁前の火曜日行動に参加し、上映後の監督トーク・ショウ、ラジオ番組へのインタビュー出演、オンライン上映会と後の対談など、精力的に活動しておられます。自主上映の依頼も入っているようです。ぜひ一度、見てください。(佐野裕子)