
自民党の杉田水脈衆院議員に、研究内容を中傷されたとして、牟田和恵大阪大学名誉教授など4人の研究者が、名誉毀損で1100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決(5月30日)で大阪高裁は、杉田議員に33万円の賠償を支払うよう命じた。一審判決(京都地裁)を覆す逆転勝訴だが、研究内容についての訴えは認めず、牟田さん以外の3人の控訴も棄却した。
裁判では、裁判長の「主文読み上げ」で杉田に33万円の賠償を命じたことがわかると、満員の傍聴席から「勝訴だ」と喜びの声が上がった。判決後の報告集会(写真下)に原告団4人、弁護団3人が到着すると大きな拍手が起こり、若い教え子たちからねぎらいの花束が贈られた。
勝ち取ったものと課題
弁護団は「この裁判で一審判決を逆転させ、研究費の『ずさんな経理』に関する杉田の発言は真実に反しており、牟田さんへの名誉毀損に当たると認定した」と評価した。原告団は「国会議員で大きな影響力をもつ立場にありながらこのような無責任な発言を行った杉田氏には、これを重く受け止め真摯な反省をするよう求めたい」と述べた。
一方、判決文について弁護団は、「『原告達の研究内容(性の平等に関する女性運動や、日本軍「慰安婦」問題研究)への杉田の発言は、一つの意見であって名誉毀損ではない』とし、しかも一審の支離滅裂な文章とは違って、ある意味、法律的に理路整然と述べているところはむしろ悪くなっている」と批判。原告団も「『慰安婦問題はねつ造』、『研究を反日運動の手段にしている』という杉田の身勝手で根拠のない『信念』を、判決文は『論評であり、見解の相違があるだけ』とした。裁判所が杉田の主張を公的に認め、ハクをつけたことになる」「一見もっともらしい『両論併記』こそ危険だ」と批判した。
杉田発言の背景には、「杉田的なもの」を守ろうとする政府の意図がある。それは強制徴用工問題などにつながっている。司法もその枠にはまっていることが示された判決だ。報告集会には100人以上が参加。原告、弁護団、支援者など多くの女性たちが立ち上がって一歩を切り拓いた裁判だった。(草間智子)
