
6月21日に会期を終了した第211国会を、ジャーナリストの青木理氏は報道番組で「戦後最悪の国会」と呼んだ。まったくその通りだ。
5月31日には、原発の運転期間を60年超に延期するGX脱炭素電源法が成立した。福島原発事故の収束の目途が立たない中で「原発回帰」へ舵を切った。また政府は今夏以降に核汚染水の海洋投棄を強行するつもりだ。
改正マイナンバー法(6月2日成立)によって、来年秋に現行の健康保険証が廃止され「マイナ保険証」に一本化されることになった。現状でも4割の医療機関が使えない「マイナ保険証」の強制は国民皆保険制度の崩壊につながりかねない。
6月16日には、当事者の声を無視して「LGBT理解増進法」が成立した。自民党の西田昌司議員は「国が指針を示すことで、地方や民間団体が過激な方向に走らないよう歯止めをかける。そのための道具としてLGBT法案が必要」と公言した。この法律は「差別の禁止を求める動き」を制限するためのものなのだ。
極め付けは難民の強制送還を簡単にする入管法の改悪(6月9日成立)であり、防衛財源確保法(16日成立)である。後者は軍事費総額43兆円を5年間で確保するためのもの。これで日本は米中に次ぐ、世界第3位の軍事大国となる。そこで目指している敵基地攻撃能力とは中国を敵国と想定した先制攻撃能力のことだ。なぜ私たちが米国の側に立って、米中対立の矢面に立たなければならないのか。中国とのミサイル戦争になればどうなるかは、ウクライナの現状を見れば明らかだ。いったい誰がそんなことを望んでいるというのか。
米国のための安全保障戦略・核戦略にがんじがらめの日本では、民主主義が死に瀕しているのである。(深田京二)
