
6月3日、エルおおさか本館6階大会議室(大阪市中央区)で「教科書全国集会2023 琉球弧の軍事要塞化と戦争教科書」が開かれました。集会では北上田毅さんが南西諸島の軍事力強化と辺野古新基地建設の現状と課題について講演(2面に記事)。「子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会」(以下、大阪の会)のおおか相可文代さんが小学校教科書採択に向けて報告しました。2023年の小学校教科書採択へ向けて、「『平和・人権・共生』を大切にした教科書を子どもたちの手に」を基準に、教科書の内容を見ていこうという話です。
愛国心、歴史修正主義
今年の文科省の検定の観点は次のようなものです。道徳では、愛国心を刷り込むために「日本スゴイ」を記述させる。社会科では、歴史の真実を隠すために、「従軍慰安婦」の記述から「従軍」を削って、ただの「慰安婦」にする。領土問題や自衛隊の海外派兵などでは日本政府の主張だけを教える。イラク派兵は激戦地への派遣だったのに、平和的なボランティア活動だったようにイメージさせる。災害支援の自衛隊の写真。教科書会社が一発で検定合格するように文科省の意向を反映させようとしています。
教科書運動の成果
2017年、安倍政権の時に初めて道徳教科書が出てきましたが、この6年間で大きく変わりました。当初は、道徳を教科化したいという政府の意向に迎合した教材が多かったのですが、大阪の会が批判した教材がかなり消えました。市民の意見・世論を教科書会社も無視できなかったのです。市民アンケートや要望書は教育委員会の人だけでなく、教科書会社の人も見ているのです。
保健体育では世論の力で、学習指導要領にはない「性の多様性」の記述が入りました。
2011年に東大阪市が大阪府下で初めて育鵬社の公民教科書を採択してから13年間、教科書運動の力でフジ住宅の不正アンケートを暴いたり、議会やマスコミに訴えたりしてきました。その結果、育鵬社公民教科書は2020年に泉佐野市が採択したのを除いて、採択させませんでした。泉佐野市では教育長が市民アンケートや要望書を教育委員に一切見せていませんでした。
取り組んでほしいこと
各地で教育委員会への申し入れ、議会の傍聴、市会議員との連携し、議員に「平和・人権・共生」を大切にした教科書の採択、公正・公平な採択を要望してもらう。教科書採択会議の傍聴、教育委員会の答弁を記録、開示させるなど、やれることはたくさんあります。
相可さんは最後に「教科書展示場に足を運んで、市民アンケートを書いてください。民主主義を実現する力は、市民の関心と行動です。そしてメディアが報道することです」と呼びかけて報告を締めくくりました。(佐野裕子)
