ユン・ソンニョル政権の発足以来、韓国の貿易赤字の拡大が止まらない。韓国の産業通商資源部が6月1日発表した「5月の輸出入動向」によると、5月の貿易収支は昨年3月以来15カ月連続で赤字となった。これは国際通貨基金(IMF)危機(97年)の時の連続赤字記録を抜いており、韓国内では第二の通貨危機が発生しかねないという懸念が高まっている。
今年5月の累積貿易赤字額は683億ドル(約9兆7420億円)にのぼっている。赤字幅は1月(125億3000万ドル)をピークに減少傾向を示しているが、急激な輸入減少による影響が大きく、韓国経済を支えている輸出の不振は続いている。輸入が減少したのは、景気回復の遅れに伴って国内生産が鈍化し、各種原材料の輸入需要が減ったためで、韓国経済は典型的な不況期の様相と呈している。

半導体輸出が激減

輸出減少の主な原因は、対中国輸出と半導体輸出の激減だ。22年1 -5月期の韓国の対中輸出は684億2400万ドルだったが、23年同期は497億ドルで、187億ドル以上も減少。一方、韓国の対米輸出は22年同期451億8500万ドルだったが、23年同期には454億9700万円と微増しただけだった。
半導体輸出の増加率を見ると、23年1月▲44・5%、2月▲42・5%、3月▲34・5%、4月▲41・0%、5月▲36・2%と、韓国の半導体輸出が激しく落ちこんでいる。

デカップリング

こうした統計を見れば、米バイデン政権が進める「対中国デカップリング(切り離し)」政策が韓国経済にとって命取りになりかねないことが一目瞭然だ。
特に半導体市場をめぐって米国は中国との覇権争いを激化させている。それを象徴するのが「チップ4」である。これは、米国、日本、韓国、台湾の半導体同盟を形成して中国に対抗するというものだ。
韓国の21年の半導体輸出のうち中国向けは約7兆円、約4割を占めていた。中国市場からの切り離しは、韓国経済にとってメリットがゼロどころが、致命的なマイナスになることは最初から分かっていた。(つづく)