訪問介護では、利用者さん宅から他に移動する間は猛暑にさらされます。私の経験では、常勤ヘルパーの場合1日6件から8件ほど回ります。1件ごとの移動に15分かかるとすると、1時間半から2時間が屋外移動となります。熱帯夜明けの日はかなり堪えます。
利用者さん宅の訪問時には「汗だく」はNGです。サービス中の汗には寛容な方も多いようですが、到着時に汗だくのままで調理、掃除、さらには「身体を抱えてベッドから車椅子に移動」となると、さすがに敬遠されるでしょう。とはいえ、訪問先でいきなり着替えるというわけにもいきません。女性スタッフの場合は、汗をかいたら事業所か自宅で着替えるしかないので、行動半径が制限されます。
車移動ならばどうかといえば、私が勤務するエリアは駐車環境が悪く、路駐も含め「駐車してから歩き」の時間が片道5分以上になるのがほとんど。バイクの方が、まだましです。あれやこれやの困難をのりこえて、「時間に正確、清潔なヘルパー」の訪問につながっています。

エアコンが使えない

熱中症の危険は、屋外移動だけではありません。訪問先ではリビングや寝室にエアコンが設置されていても、トイレや浴室にもエアコンというお宅はほとんどありません。キッチンもリビングとつながっていることが多く、なんとかエアコンが効きますが、昼過ぎのトイレや浴室掃除のサービスはなかなかきつい。外気温が35度を超えると、トイレ・浴室の室温はそれ以上になります。マスクがすぐに汗でぐっしょりになってしまいます。
今はマスクの在庫は安定していますが、2020年の夏は買い占め騒動もあり不織布マスクを毎日洗って使い回しました。
一般的に、「身体介護の方が掃除などの家事支援に比べて大変」と考えられていますが、特に猛暑シーズンはそうではありません。身体介護の部屋のほとんどは冷房が効いているからです。
「冷房なし家事」が終わったあとのヘルパーのダメージは大きいです。エアコンが効いたデスクでパソコン仕事の厚生労働省官僚には、この状況はわかりません。
ときどき、絶対にエアコンを使おうとしない方もいます。主に経済的理由からのようですが、介護スタッフがもたずにギブアップする場合があり、難しい問題です。
近所で訪問介護ヘルパーらしき人が汗だくでタオルで拭っていたら、エアコンの効かない場所で仕事をしてきたのかも。事情を汲んでみてくださいね。(小柳太郎/介護ヘルパー)