
誰でも他に言いたくないことがある。それが悲惨であればある程、秘匿しておきたい。ムンチの女性たちも同じ気持ちに違いない。しかし「性売買と性犯罪は紙一重の差もない」と怒りを持って決起した彼女たちは、その苦しみを押し殺して、性売買現場の実態を証言した。性売買の根絶に向けて共に闘おうという私たちへのエールである。心して確(しか)と受けとめ、応えなければならない。
過酷な重「労働」
ムンチのメンバーは性売買現場の日常をこう語っている。
「客を連れてきた叔父さん(売春店の店主や従業員)からコンドームを受け取る。これから一時間、さあ戦争だ。水台(エステベッドみたいなもの)の所に客を脱がせていき、シャワーで全身を洗う。仰向けに寝かせてラブジェルを客と自分の身体に塗る。犬みたいにかがみながら自分の胸や手や舌を使い、撫でたり、しゃぶったり、肛門まで舐めまわし挿入せずに発射させる。成功だ! 腰はガクガクだし、口もひどく痛い。これで前半の30分が終了。後半は同じようにして『2次』(本番)に入る。アソコが裂けそうな程、腰が折れそうな程痛む。遂に成功だ! 終了を店のカウンターに電話で知らせる。店主から次の客が溜まっているから、さっさと済ませろと催促される。再び次の一時間が始まる。こうして日に少なくて6人、多くて10数人。夕方6時から翌朝6時までほとんど休みなしに続く。朝6時になると『今日も終わりだ。これで眠れる』。店のカウンターに現金入りの封筒が置かれてある。今日働いた分のお金を受け取る。客の支払う18万ウォンのうち、私の取り分は8万ウォン。今日は11人の客を取ったから88万ウォン。ローンで借りたあちこちの業者(すべて売春店とつながっている)に入金して残ったのは5万ウォン。疲労は極限に襲って来る。涙が出る。力が抜けて食欲も出ない。どんどん痩せていく」
「10人の客への性感マッサージで安物のオイルの3分の1が私の口に入る。舌は荒れ、手首は炎症を起こし、顎が外れそうになり、腰はガタガタになる」
「客の中には支払った以上のサービスを要求し、やりたい放題しておきながら文句をつけて金を出さない奴もいる。店主は困らない。その分を私たちの借金につけておくからだ」「客が『ツケにしたい』と言えば、それも私の借金になる」
「一時間サービスを続けても、客が酒に酔って射精できなければ金を返せと言われる。返せないと言うと、警察に通報すると脅してくる」
無限にふくらむ借金
「体調がわるくて平日に休むとペナルティーが課せられる。その日の収入がないだけでなく、また借金が増える」
「客のタバコ代、カラオケの新曲代、おつまみや酒代、水道光熱費、部屋代まで店主から請求される。日々稼がねば借金の利子も返せない」
「一所懸命サービスしても客からもらったチップまで店主が回収する」
「なかなか好人物との店主の評価の客も、買春の空間に来たら、値引きを求めたり、タダでやろうとしたり、私に借金を背負わせたり、『昼間に外で会おう、恋人になろう』はタダでやりたいという意味」「いくら仕事をしても自分で金を手にしたことはない。ただ店主の帳簿上で金が動き、そしていつまでたっても借金は減らない」
以上のように性売買とは性搾取そのもの。いつまでも終らない借金や前借金でがんじがらめにされ、女性は売春店から売春店に売られ、その度に借金が増えていく構造である。14歳から買春させられ、18歳になると「盛りが過ぎた」と店主の女性への扱いがますます雑に乱暴になっていく。
性売買というとセックスだけを売っているように聞こえるが、身体そのもの、「存在そのもの」が売買されているのだ。これは現代の奴隷労働であり、人身売買ではないか。死にたいと思った無数の瞬間を乗り越えて、生き延びて来たと女性たちは語る。
客や店主からの暴力
「客からボコボコに殴られた経験のない女性が果たしているだろうか。過去を思い出し、その思いが次々と連なって毎夜まんじりともできない」これがムンチの女性たちの日々の現実だ。
性搾取の無法ぶり、売買春業者のやりたい放題について見てきたが、問題は搾取だけでない。次回は、性売買の現場で苛烈な暴力と差別の下におかれている女性たちの証言を紹介したい。 (つづく)
