韓国との関係が悪化する中国

「北方政策」を覆す

 韓国の歴代政権は、「保守」であれ「進歩」であれ、北方政策(対中国・対ロシア関係)では関係改善を進めるという点で一致していた。なぜならそれには合理的な理由があったからだ。経済面では旧ソ連圏・中国・東欧諸国への市場拡大である。そのためには中ロ両国との良好な関係は必須条件だ。また核保有国である中ロとの関係改善は、朝鮮半島の安定を確保し、北朝鮮の核問題の解決を図るためには不可欠だ。
 ソ連(90年)と中国(92年)との間で国交を樹立し、台湾と断交したのはノ・テウ大統領だった。イ・ミョンバク大統領は、韓中関係を「戦略的パートナーシップ」(2008年)に格上げした。パク・クネ大統領は、習近平国家主席を始めて国賓として韓国に迎え入れ、自身も15年の中国の戦勝70周年記念式典で天安門に登った。これらはムン・ジェイン大統領の「米国(安保)と中国(経済)のバランス外交」につながっていた。
 ユン・ソンニョルは、30年来の韓国の「北方政策」を覆してしまった。特に対中関係は悪化の一途をたどっている。
 それを象徴するのが「4不可」といわれる中国の対韓方針である。具体的には、▽(台湾問題など)中国の「核心利益」を害した場合、韓中協力不可▽韓国が親米・親日一辺倒の外交政策に進む場合、協力不可▽現在のような韓中関係の緊張が続く場合、高官級交流(中国の習近平国家主席の訪韓)不可▽悪化した情勢のもとでの韓国の対北朝鮮主導権の行使不可(北朝鮮の核問題などの南北問題の解決に中国は協力しない)、というもの。事態は中国政府が韓国政府に対して、踏み越えてはならない「禁止ライン」を示さなければならないところまできている。(つづく)