阪神高速淀川左岸線2期工事=海老江下水処理場付近(大阪市此花区)/阪神高速道路のウェブサイトより転載

大阪府知事と大阪市長が協議するトップ会議、副首都推進本部会議は、9月5日、大阪・夢洲カジノの実施協定案を承認した。6日、大阪市内で開かれた集会で、IR・カジノに反対してきた「どないする大阪の未来ネット」馬場徳夫さんは、実施協定案の重大な問題が二つあると話した。

リスク高い協定案

一つは、夢洲の地盤沈下問題である。協定では想定を超える地盤沈下が生じた場合には、その費用を大阪市が負担することを明記した。IR推進局や港湾局に問い合わせると、「5年間で4メートル沈下」という想定だ。これは関西空港の地盤沈下を参考にした数値だが、ゴミの最終処分地として埋め立てられた夢洲は、空港として堅固に建設された関空に比べて、埋め立て地そのものが軟弱だ。そのため、夢洲の地盤沈下が想定以上に進行すれば、そこで発生する追加費用はばく大なものになる。それを全部、大阪市が負担することになってしまったのだ。
二つめは、IR(カジノ)事業者に撤退する権利を与えたことだ。「インバウンドが回復しない」「土壌改良がうまくいっていない」「IRへの国民的な支持が薄い」と言ったことが、撤退の理由になるというのである。もしも事業者が撤退ということになれば、後に残るのは巨額の負債だけである。
このように事業者にとっては有利で、大阪府・市にとっては極めてリスクの高い実施協定案が来年早々にも国によって認可されようとしている。

負担は市民にシワ寄せ

大阪万博では、夢洲とJR大阪駅方面をつなぐ阪神高速「淀川左岸線」などのインフラ整備に約7000億円を投入する。たった半年間の万博のためになぜこれほどのお金を使うのか。実はこうしたインフラはすべてIR・カジノのためのものなのだ。
だから万博を中止に追い込めば、IR・カジノを止めることができる。
もしも万博が中止になれば、売上予想額の2%を賠償金として支払わなければならないが、それは16億円程度で済む。参加国が出展準備に要した費用も賠償しなければならないが、現在、準備している国はほとんどない。カジノのインフラのために7000億円を無駄遣いするよりも、万博を中止して16億円を負担した方がましだ。
馬場さんは「多くの団体から万博中止を求める声明を出してほしい。みんなで声をあげて、年末から始まる建設工事を中止させよう」と訴えた。(池内潤子)