
成田空港の敷地内で闘い続けている市東孝雄さんを支援する集会が、9月3日、大阪市内で開かれました。主催は三里塚関西実行委員会。コロナ禍の影響で、1年4カ月ぶりの三里塚集会でしたが、2月の強制執行という大きな動きがあった後の集会ということで、参加者の関心の高さがうかがわれました。
約束反故にした空港会社
最初に、一瀬敬一郎弁護士から裁判闘争についての包括的な説明がありました。配布された資料には詳細な年表が掲載されており、これまでの経緯が詳しくわかるものになっていました。
まずもって許せないのは、空港会社が「強制的な土地収用は行わない」という約束を一方的に破棄し、今回の強制収用に至ったことです。さらに悪質なのは、農民が安心して農業ができるようにと定められた農地法によって農民の土地を空港が奪うことを、裁判所が認めていることです。強奪された農地は、半年を過ぎた現在も放置されたままで、草が生い茂っているそうです。一体何のために土地を取り上げたのか。市東さんの無念さは想像に余りあります。
そして現在係争中の「耕作権裁判」。この裁判は、空港会社が市東さんの耕している土地を不法耕作地であるとして、明け渡しを求めたものです。しかし長い裁判闘争の中で、空港会社側の不審な部分が表面化してきました。第一に、訴えた側の空港会社が一部の土地の所在を、当初の土地とは異なる場所に変更して明け渡しを主張していることです。第二に、空港会社が提出した地主の藤﨑政吉氏と市東東市さん(いずれも故人)との賃貸借契約書や図面に偽造の疑いがあることです。
裁判が進むと、筆跡の不一致や名前の誤字、さらには地主自身がそのような文書を交わした覚えがないという事態が明るみとなりました。追い詰められた空港会社は、「当時の責任者は死去しており、文書の入手経路等は確認できない」と、用地交渉に関する裁判所の文書提出命令を拒否し続けています。
一体なぜこのようなことが起こったのでしょう? 推測されることは、空港会社が地主を買収して、土地を地主から買い取ることで解決を図ろうとしたが、最後まで地主との間で信頼関係が築けなかったのではないかということです。そのため、土地の所在に関する空港会社の「認識」と地主の「主張」が食い違っていたにもかかわらず、土地の買収手続きを早く済ませたい空港会社は、地主の「主張」に合わせて、自分たちの「認識」の方を変えたのではないか、という疑惑です。これではまともな売買契約とは言えません。
次に「偽造文書」について。地主側は、自身の名前が署名されているその文書を「見た覚えがない」と全面的に関与を否定したというのです。いずれにしても、訴えの根拠となる事実そのものが誤っていたり、偽造されていたりする疑いがあるのです。これでは裁判の体をなさぬばかりか、逆に名誉棄損で訴えられかねないような妙ちくりんな裁判を17年間も続けているのです。まさに前代未聞の事態と言わざるを得ません。
どんな攻撃にも屈しない
続いて萩原富夫さんから、現地の報告がありました。今回の強制執行で、市東さんは離れと一部の畑を取り上げられました。離れは農作業に必要不可欠なもので、農家にとっては大打撃です。新たに小屋を増設し、当面は生活の立て直しに専念するとのことです。どのような攻撃にも屈せず、農地を耕し続ける市東さんの姿には感動を覚えずにはいられません。支援しているはずの私たちが、三里塚から力をもらっています。これこそが三里塚の運動です。
萩原さんは、今後も成田空港の拡張や機能強化に反対し、署名運動や裁判闘争を続けていくと決意を述べました。また二酸化炭素放出や気候変動の観点からも、空港反対のより大きな運動の輪を作ることができないかと模索しているとのこと。いつものように肩の力を抜いた自然体に魅力的な笑顔で、三里塚現地の息吹を伝えてくれました。
(安芸一夫)
市東さんの農地を守ろう! 空港機能強化反対! 改憲阻止・岸田政権打倒! 10・8全国総決起集会 ●10月8日(日)正午~ ●成田市赤坂公園(成田ニュータウン内)/主催:三里塚芝山連合空港反対同盟
