
「もしも日本が中国と戦争になれば、日本人の大半は餓死する」と言われるほど、中国への食品輸入の依存度は大きい(食品分野に限ったことではないが)。私が子どもの頃、母は食事の度に「戦争中は本当にひもじい思いをして、芋のつるまで食べていた」という話を切々と語っていた。当時、母の実家の理髪店では、住み込みで働いていた従業員を食べさせていくことができず、田舎に返したら、そこで餓死してしまったという。そのため母は、自分の子どもたちに好き嫌いをすることや、米粒を一つでも残すことを許さなかった。庶民にとって戦争とは、何よりも「飢え」だったのだろう。
にもかかわらず日本政府は「台湾危機」を煽りながら、軍備を拡大している。8月24日から始まった福島第一原発の放射能汚染水の海洋投棄に対して、中国は日本産海産物の全面禁輸に踏み切った。日中関係は悪化の一途をたどっている。この連載では、放射能汚染水の海洋投棄の犯罪性と日本の食糧自給率の破滅的な低さについて考えていきたい。
モルタル固化
1回目の汚染水の海洋投棄は、9月11日正午過ぎに完了した。投棄したのはタンク10基分7800トンである。今年度中に、3万1200トン(タンク約30基分)の投棄が計画されている。
政府や東電は汚染水の海洋投棄を「やむなき唯一の選択」と言うが、複数の科学者たちが代替案を提案している。そうした提案をまともに検討しないままに行われた「選択」である。
代替案の一つはモルタル固化方式だ。この方法は米サウスカロライナ州の核施設(写真右)で採用されているもので、放射能汚染水をセメントと砂でモルタルにして永久に固めるというものだ。こうすれば海への流出はなく、環境への影響が最も少ないといわれている。(モルタルは砂と砂利を混ぜるコンクリートとは違う)。(想田ひろこ)
