
社会からの差別
「性売買を法律で禁止なんてするから、罪のない普通の女性や子どもたちが性犯罪に遭う。そうならないために性売買を合法化したらいい」と平気で語る人たちがある。ムンチの女性たちは怒って抗議する。「親に殴られて育ち、男にだまされてレイプされ、売られたことがなかったら、私たちも『普通の女』になれただろう」。
その通りである。彼女たちに何の罪があるというのか。罪があるといえば買春する男たちにこそある。しかし社会はそれには寛容である。この世で一番気楽にぞんざいに扱ってよい相手が性売買女性であり、「汚らしい売女」と罵る男たちが、性売買は必要悪だという。男たちは単純に性欲だけで訪れるのではなく、支配欲や自己顕示欲の発散として売春店に来るのだ。腐敗せる現代資本主義社会、格差社会の矛盾の集積場であると言える。
性売買合法化(公娼制)にすべきという世論は、「性売買女性が処罰されないなら、当然、男性の買春も処罰すべきでない」と、そこに目的がある。
日本由来の性搾取
日本の性売買は自由意志でおこなわれ、暴力的搾取はないと思っている人も多いが、実は日本の性売買の現状も韓国と変わらないし、そもそも韓国の性搾取「文化」は日本に由来している。
性売買業者が女性を支配する最も根強い方法に、さまざまな名目で女性に借金を追わせ、返済まで廃業できなくさせる前払金のシステムがあるが、これはもともと日本の公娼制度の前借金を踏襲している。この7月に来日されたムンチのメンバーが新宿歌舞伎町を歩き、性産業があふれている様を見て驚愕したと語った。無料案内所という名の性売買斡旋紹介所が各所に堂々とある。
日本から韓国に行って買春する男たちも多いという。昔、私たちがまだ若いころにキーセン観光が問題にされたが、「日本の男たちよ、まだやっているのか」と情けなくなる。7月10日の集会でムンチのメンバーが、「日本の男はケチでしかもヘンタイが多い」とユーモアを持って、しかし事実を語られ、つい日本人参加者は自嘲的に笑ってしまった。
日本でも昨年『灯火』という反性搾取の立場に立つ性売買経験当事者グループがようやく誕生した。韓国のムンチとオンラインで日常的に連絡・交流している。7月10日の大阪集会にも『灯火』のメンバーが発言された。どことなくまだ幼さが残る肩をふるわせ、言葉に詰まりながらの発言は参加者全員の胸を打った。「知らなかった」では済まされない。
『灯火』につながり、虐待や性被害・貧困の10代の女性たちを支援する一般社団法人『コラボ』は今、激しい誹謗中傷と攻撃にさらされている。ここにもレイシストや差別主義者が暗躍している。
『コラボ』代表の仁藤夢乃さんからも発言があった。集会参加者の世間的無知やあいまいさを絶対許さないと私たちへの糾弾があった。ムンチのメンバーの発言に対して「参加者が笑ってはいけないところで笑った」「どれだけ苦しくツラい思いでムンチの女性が話されているのか、分からないのか!」と叫んだ。レイシストの激しい攻撃の先頭に立って命をかけている仁藤さんだからこそ言える言葉である。
闘いの遅れ自覚しよう
『灯火』や『コラボ』を絶対に守っていかなければならない。日本の民主派や左翼の闘いは、この領域において決定的な遅れがある。そのことをしっかりと自覚しよう。それが今、性搾取を許さない社会を築こうとする私たちの不可欠な課題に違いない。(おわり)
