瀧 ― ノスタルジア
     渡辺信雄

 熱波の街を 逃れて
 記憶の中の故郷の 山奥へ行く
 父である瀧が 在り
 滝壺で 母は白くほとばしるものを
 受けていた
 二人は 天へ召したが
 瀧は 動かずに そこに立ち尽くしていた
 瀧音の響き 遠く近く
 修験者が登った山道を 這い上がる
 どこからか落ちてくる 石を除け
 滑りつつ 踏み止まる
 霊気が 漂い 降りてくる
 躰に霊気を入れる
 日々 瀧は己を洗い続けている