
沖縄県が辺野古・大浦湾での埋立工事の変更を「不承認」としたことで、国(政府)との間の裁判となっていた。最高裁はこの9月4日、またもや国の側にくみする判決を言い渡し、埋め立て続行のお膳立てをした。
そもそも、沖縄県が辺野古移設に反対する理由は、①加重な基地負担―在日米軍基地面積のうち沖縄県の割合が70・27%、②民意―辺野古基地建設に反対する県民世論が多数、③自然環境―絶滅危惧種であるジュゴンなど多様な生物への悪影響、④工事の長期化のため、普天間飛行場の一日も早い危険性除去につながらない、など。
この主張は、翁長知事以来一貫している。
訴訟の経緯
今回の訴訟の経過は、大浦湾の軟弱地盤が明らかとなって防衛省沖縄防衛局が沖縄県に埋立工事変更の承認を求めたが、県は地盤の安定性等が十分に検討されていないとして承認しなかった。これに対して防衛局は、国土交通省に県の「不承認」に不服申立てをし是正を求めた。国土交通省は県の不承認を取消す「裁決」をし、さらに県に承認するよう「指示」した。県はこの「裁決」「指示」が違法・無効であるとして訴訟に出た。
県が訴訟で理由の軸としたのは、防衛局と県との紛争について、防衛局と同じ内閣のもとにある国土交通省が「裁決」したのでは、選手と審判を同じ人物がかねているようなもので公正さに欠ける、という点であった。国土交通省は行政法規に則った適正な判断であると反論していた。
杓子定規の判決
行政法規の解釈適用は、判断する者の価値観によって決まる場合が多い。太平洋戦争における悲惨な被害を背景に、かつ地方自治の本旨を重くみる沖縄県の主張に「正義」をみて法規を柔軟に解釈適用するか、行政の統一安定・迅速などに価値の優勢をみて法規を杓子定規に適用するか、によって異なってくる。
残念ながら今回も、最高裁は辺野古移転の是非や埋め立ての安定性などに検討を加えないまま、行政法規を型どおりに適用して国土交通省の「裁決」「指示」を是認し、県の訴えを退けた。
最高裁の姿勢は、辺野古移転をめぐって玉城知事がこれまで起こした幾多の訴訟と同じである。それはまた、砂川訴訟において統治行為論を持ち出して安保条約の違憲性判断を回避した、あの法の番人たる責任の放棄と変わらない。
玉城知事は逆流のなかで、9月19日、ジュネーブの国連人権理事会で、辺野古移転工事を強行することの非を世界に向けて力強く訴えた。私たちの、辺野古基地反対の闘いはこれからも続く。
(「西神ニュータウン9条の会ニュース」から、筆者の承諾を得て掲載)
