
沖縄に自衛隊配備とPAC3などの武器や弾薬庫などの配備が着々と進んでいます。9月24日「沖縄を再び戦場にしない県民の会」のキックオフ集会、27日には、ミサイル配備断念を求める市民大集会があり、今後、11月23日、奥武山公園野球場で開かれる大県民集会に収斂していくでしょう。
設計変更承認迫る政府
辺野古新基地建設では毎日の現場の闘いのほか、8月28日に最高裁判決前の緊急県民集会、9月5日、最高裁の判決を糾弾する緊急県民集会、12日、知事激励の緊急県民集会がありました。最高裁の判決により、知事が設計変更を承認するかどうかに焦点が移っています。国は知事が国連に出かけていた20日に、設計変更を承認するよう勧告を行い、その期限を27日としました。
9月18日から23日にかけて国連人権理事会総会に出席した玉城知事は、「辺野古新基地建設については県民投票で県民の7割が反対しているのに、工事を強行している」と政府の民主主義軽視を訴えました(写真)。
翌日、県内のマスコミは知事の発言をくわしく紹介しながら、今回は「自己決定権」の言葉が出てこなかったと、記事に書き込んでいました。前回、2015年の国連人権理事会総会では、翁長知事が「沖縄の人びとの自己決定権がないがしろにされている」と訴えました。その後、県議会保守がこれを問題にし、「自己決定権とは、他民族に支配されている人びとが使う言葉である」と指摘。国が民主主義を踏みにじる話ではなく、先住民議論になった経緯がありました。そこで今回は、国連へ出発する前に保守の県議団から、「発言には十分留意するよう」「国連で沖縄県民が『先住民』と誤解されることのないよう」クギを刺されました。そのためか「自己決定権」の文言を出さなかったと思われます。
琉球遺骨裁判で判決
ところが戦前に、第一尚氏関係の古墓から無断で持ち去られた遺骨が京都大学に保管されており、その「琉球遺骨返還請求訴訟」の控訴審判決が9月22日にあり、判決文の冒頭「事案の概要」に、「沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する原告らが…」と言及しました。判決そのものは原告が敗訴、しかし判決文は「琉球民族」と認めており、提訴した原告もその部分は満足の意を表明していました。
この件は、以前の国連自由権規約委員会でも沖縄の人びとを先住民族と認定しており、目新しいことではありません。せっかく保守の県議たちが先住民族と誤解されないようにとクギをさし、玉城知事は慎重に言葉を選んだのに、図らずも裁判所が先住民と認めてしまいました。日本国が単一民族ではなくアイヌ民族も居り、琉球民族が居ても不都合はないはずですが、認めたくない人びとが玉城知事に圧力をかけても裁判所が先住民と認めてしまったのです。
国連の人権委員会では、先住民(族)は、政治的地位を自分たちで決め経済的、社会的、文化的な発展のあり方や、その方法なども自分たちで決めることができるという権利があり、それを先住民の自己決定権と言っているのです。
「勧告」と民主主義
だから先住民たる沖縄の人たちが、政府の県民の民意を聞かない態度に対し「自己決定権をないがしろにしている」と言っても、「その通り」ということになります。故翁長知事が言っていた「自己決定権」は県民投票で県民の7割強の反対があるにもかかわらず、その反対の意見を抑え込むのは地方自治をつぶすものであり、それを取り返す意味でも地方自治体の自己決定権です。玉城知事はそれを言おうとして、ちょっとインパクトに欠けますが「民主主義軽視」と言ったのです。
今回、国の施工変更を県が不許可にしたことに対し、最高裁判決は軟弱地盤や県民の反対などの中身に立ち入らず、それを避けた判決です。だから地方自治、民主主義を守るために玉城知事は勧告を無視してよいのです。勧告に対する返事期限は27日。私たちは固唾を飲んで見守りました(9月24日)。27日、玉城知事は国の勧告に「期限までの承認は困難」と回答しました。(富樫 守)
