
京都大学が保管している琉球人遺骨の返還を求める訴訟の控訴審で、9月22日、判決が言い渡された(大阪高裁、大島眞一裁判長)。判決は原告側請求を棄却した一審判決を支持し、控訴を棄却したが、裁判所として初めて琉球民族を先住民族として認めた。
返還を求めている遺骨は、戦前、京都帝国大学助教授・金関丈夫が沖縄県今帰仁村(なきじんそん)の百按司墓(むむじゃなばか)から持ち去ったもの。現在も京都大学に保管されている。2018年12月、百按司墓に祭られている琉球国・第一尚氏の子孫の亀谷正子さん、玉城毅さん、龍谷大学教授の松島泰勝さんなどが京都大学に遺骨の返還を求めて、京都地裁に提訴。一審判決で京都地裁は、百按司墓から金関丈夫らが複数の遺骨を持ち出したと認定。原告の亀谷さんと玉城さんが第一尚氏の子孫であることを認めたが、原告らは継承者に当たらず、返還請求権もないとして、その請求を棄却していた。
遺骨に静かに眠る権利
控訴審判決の9月22日、原告、弁護団、支援者は「琉球人の尊厳回復を目指して」という横断幕を掲げ、大阪高裁へ行進した。多くの支援者が集まり、一部は法廷に入ることができなかった。
大島眞一裁判長は、原告側の請求を棄却した一審判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。また百按司墓からの盗骨について判断はしなかった。そして原告の所有権も認めなかった。
しかし、判決文の付言で日本の裁判で初めて、「沖縄地方の先住民族である琉球民族である控訴人」と、琉球民族は先住民族であると認めた。さらに、「遺骨は静かに眠る権利があり、ふるさとに帰るべきである」と述べ、京都大学、原告、今帰仁村教育委員会の関係者によって遺骨の移管について協議することを求めた。
判決後の報告集会では、請求棄却に対して会場から「不当判決」「京都大学は、裁判では勝利したかもしれないが、社会的には敗北した」「上告、最高裁でたたかおう」などの発言があった。また琉球島唄文化研究会牧志徳さんが島唄を唄って支援者を励ました。
裁判の限界
弁護団長の丹羽雅雄弁護士は今回の判決について次のように感想を述べた。「今回の判決が示したことは、法律の論理では一審の京都地裁判決を越えることができないということだ。しかし、戦後はじめて裁判所が、沖縄地方の先住民族である琉球民族として控訴人を認定した。これは驚くべきことだ」
「また判決では『遺骨』という言葉を使っていた。とくに『付言』がポイントとなる。世界では、先住民族の遺骨返還運動が起こっているが、『付言』では『遺骨を持ち出しても、遺骨は何も語らない。しかし、遺骨は単なるモノではない。遺骨はふるさとで静かに眠る権利があると信じる。ふるさとに帰るべきである』と指摘した。そして日本人類学会から出された(遺骨返還に反対する)書面に重きを置くことはできないとした」「さらに原告には遺骨の請求権がなく、訴訟による解決には限界があるが、京大と亀谷さん、玉城さんらの原告と今帰仁村教育委員会らで話し合い、移管を含め適切な解決の道を探ることが望まれる、『遺骨がふるさとに帰ることを願っている』と述べている」
丹羽弁護士は最後に、「裁判の限界を突破できなかったが、悔しさをもって次へ向かいたい」と決意を語った。
