
「いのちと暮し、貧困、格差」は、誰もが直面し憲法や政治と直接つながる問題だ。国際人権法の研究者、藤田早苗さんは、「世界でいちばん深刻な人権侵害は、極度の貧困の問題」という国連人権高等弁務官の言葉を引いている(『武器としての国際人権』)。
「子どもの貧困」。私も貧困家庭に育った。母親は八百屋さんで大根の葉をもらい、煮魚はアラ。「アラ」は魚の名前だと思い込んでいた。それでも、食事ができずにひもじい思いをした経験はない。しかし、いまは1日1食、給食が唯一の食事という子どもが少なくない。背景にはシングルマザー、女性の貧困がある。
社会福祉政策が切り捨てられ、むき出しの市場原理主義が横行する80年代、90年代からの新自由主義。新たな貧困・格差の時代だ。
「非正規」雇用の拡大
いま、あらゆる仕事、職種に「非正規」雇用が拡がっている。2013年の労働契約法改正により、通算5年を超えた有期雇用労働者に無期雇用転換の権利が発生するため、18年に大量の雇止めが相次いだ。
今年4月、大学や研究期間に有期雇用で通算10年勤続していた研究者や教員の大量雇い止めが危惧された。大学教員や研究者は無期転換ルールの特例で「10年」となっていたが、その10年目が、今年4月だった。文科省の調査(4月1日)では、特例の対象者は1万2397人。そのうちの9977人(80・5%)が継続雇用となったが、無期労働契約を締結したのは551人(4・1%)だけ。雇い止めは1995人(16・1%)で、うち1499人(12・1%)は求職中か状況不明。
理化学研究所(理研)では、2700人の研究系職員の72%が無期転換特例の対象者となっていた。3月29日、理研労働組合は大量雇い止めの撤回を求めてストを実施したが、97人が雇い止めとなった。高学歴の労働者層においても非正規雇用が普遍化している。社会全体の貧困化を象徴する事態だ。(石田勝啓)
