
シンポジウム「狭山事件―冤罪を生む日本の社会構造―」に参加した(9月18日、カソリック大阪教会・部落差別人権センター主催、大阪市内)。
シンポジストは安田聡さん(部落解放同盟・狭山闘争本部事務局次長)と、黒川みどりさん(歴史学者、静岡大学教授)。
安田さんからは、狭山事件の経過と問題点のていねいな説明を聞いた。石川一雄さんの無罪を証明する新証拠として、万年筆のインクの問題や脅迫状の筆跡については知っていた。「養豚場のもの」とされたスコップについて、土壌鑑定などにより「死体を埋める際に使われたとは言えない」と話があった。
東京高裁の担当裁判官が今年12月に定年を迎える。次の裁判官に先送りをさせないで事実調べを行うように運動を盛り上げていきたいと話した。
黒川さんは、今年3月に岩波書店から『被差別部落に生まれて―石川一雄が語る狭山事件』を出版した。このシンポジウムまでに読もうと図書館に予約したが、予約者が多く順番が回ってこなかった。会場で購入しようと思ったが、品切れ状態でできなかった。
黒川さんは、2021年に初めて石川夫妻に出会い、以降10数回にわたり石川一雄さん、早智子さんへの聞き取りと、原稿確認作業を行い、狭山事件発生60年に合わせ、『被差別部落に生まれて』の出版にこぎつけた。講演の中で、「石川一雄さん最終意見陳述(1974年9月26日、東京高裁第81回公判)を、ぜひ読んで欲しい」と述べていた。
石川一雄さん不当逮捕から60年。狭山事件を知らない人も増えている。「事件の風化」が進んでいるのか。しかし、権力側は部落差別を温存し、部落差別を利用する姿勢は変わっていないと思う。
『被差別部落に生まれて』を読んで、個別(石川さんの生い立ち)と普遍(部落差別)の関連を考えたい。(大島秀夫)
