尖閣諸島(中国名、釣魚島)や台湾有事をめぐって日本と中国が軍事衝突に至る可能性はあるのか。この問題にかんするオンライン講演会が10月8日、京都市内で開かれた。講師は沖縄国際大学特別研究員の泉川友樹さん。中国を50回以上訪問している中国の専門家だ。
泉川さんによれば、中華人民共和国の大きな国家目標は「2035年までに基本的な現代化」である。したがってそれまでは中国に戦争をする考えはない。尖閣諸島をめぐる日中関係は14年11月7日の4項目合意によって安定しており、日中漁業協定も守られている。20年5月頃から尖閣領域に日本の一部の右翼が入り込んでいるため、日本の海上保安庁や中国海警局がそれに対応しているだけだ。

中国の根幹問題

また1972年の日中共同声明と78年の日中平和友好条約で「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府である」ことと、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」ことを確認している。それは98年の日中共同宣言や08年の日中共同声明でも重ねて確認されていることである。
22年の中国共産党20回大会で、習近平は台湾について「平和統一という望ましい未来を勝ちとることを目指すが、武力使用を放棄するとは約束できない」と発言した。これは1979年に鄧小平が米国でのインタビューに「中国は平和的方法で台湾の祖国復帰問題の解決を目指すが、平和的方法以外のやり方を採らないと約束すれば自らの手足を縛ることになる」と答えていたことと基本的に変わりがない。中国にとって台湾は内政問題である。台湾の一方的な独立や米軍の台湾進駐といった事態が起こらない限り、武力行使の可能性は極めて低い。
逆に、台湾が独立を宣言した場合は、米軍や自衛隊がどんなに強力であろうと、中国が武力行使に踏み切ることは確実だ。したがって「台湾有事」を防ぐために南西諸島に自衛隊を置いて「抑止力を高める」という考え方は成り立たない。泉川さんは「中国にとって台湾問題は国家の根幹にかかわる問題であり、損得や勝ち負けの次元で考えられるものではない。そこを見誤ってはならない」と強調した。

沖縄を戦場にしない

中国の戦争賠償請求の放棄で戦後発展をとげてきた日本が考えなければならないことは何か。沖縄県議会は3月、沖縄を再び戦場にしないよう日本政府に対し、対話と外交による平和構築の積極的な取り組みを求める意見書を出した。最後に泉川さんは「一部の好戦主義者の言説に惑わされず、現実に基づき沖縄を二度と戦場にしないこと。ノーモア日中戦争の声を広げていかなければならない」とまとめた。(今津悠二)