講演する山城博治さん=10月22日、神戸市内

11月沖縄県民平和大集会にむけ、山城博治さん(沖縄を再び戦場にさせない県民の会)が全国を回り、「沖縄を再び戦場(いくさ場)にさせない。若者を戦争で死なせない」「ミサイルより対話、平和外交を」と訴えている。要旨を紹介する(「1000人委員会・ひょうご」集会/10月22日、神戸市内)。

11月 県民平和大集会へ 全国でも同時集会を
11月23日、沖縄県民平和集会に向かって準備、行動しています。
なぜ、「県民の会」を立ち上げようと思ったのか、昨年12月の「安保3文書」です。この文書を見て驚がくしました。私たちの南西諸島の島々が戦場になると思いました。若い世代にも呼びかけ、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」を立ち上げるために、2月、5月と集会、9月をキックオフ集会としました。
若者たちが集まってくる中、「私たちの思いも一緒です。だけど、みなさんのところには入ることはできません。安保3文書ハンタイ! 団結ガンバロー! という、怒りと憎悪の渦巻く世界には入っていけない。若者が入れるような運動にしてほしい」という要望がありました。

「争うよりも愛したい」
そして出されたスローガンが、「争うよりも愛したい」です。はじめは宗教団体か思い、われわれの世代にはなかなか受け入れられませんでした。議論を進めるうちに、根幹にあるのは「平和であり、愛、仲間と共に支えあう」ということがわかりました。「争うよりも愛しなさい」という言葉は、沖縄のラップ歌手Rude-α(ルードアルファ)が歌う「うむい」という中にある歌詞です。
「摩文仁の丘に咲く月桃の花 金網越しに異国の言葉 『争うよりも愛しなさい』。忘れはしないおばぁの涙」と、戦争の悲惨さを歌っています。私たちの運動が若者たちを引き寄せたのではなく、この歌が若者たちに響きました。考えてみれば、沖縄には歌と運動が一体となって闘ってきた歴史があります。辺野古もそうです。若者たちと共に闘うことが重要だと思っています。
集会のチラシを見てください。この集会に集まってきたメンバーにチラシ作りをやってもらいました。「争うよりも愛したい」という言葉が前面に載っています。県民平和集会、全国にも呼びかけ1万人集会を行いたいと考えています。みなさん、ぜひ参加してください。

「国が正しい、辺野古が唯一」か 戦争への流れを止めなければ
今、「台湾有事、中国有事」が叫ばれ、そのことにからめとられ、日本が戦争するというような風潮になってきています。その流れを止めないと、本当に戦争になってしまいます。それを「どう止めるのか」なんです。
沖縄の問題に引き付けて考えると、9月4日に最高裁判決がありました。玉城デニー知事は、「辺野古新基地建設の設計変更申請は認めない」態度を示しました。しかし、国土交通省が「防衛省のいう通りにせよ」「知事の判断はおかしい」と裁判になりました。裁判所は、理由も示さず「国は正しい」「辺野古が唯一だ」とオウム返しに言っているわけです。
私たちの知事の訴えを排除しました。県民の民意ははっきりしていますが、一部には「最高裁判決には従わなければ」という意見もあり、知事に「受け入れましょう」という人もいました。今、そのせめぎあいにあります。知事は、「私は行政のトップでもあるけれど、同時に県民の民意によって選ばれた知事でもあり、辺野古(設計変更)に反対である」と示しました。それを、やわらかい言葉で「判断するには時間が足りない」と言いました。
この知事の判断に、さまざまな批判も出ています。沖縄県議会では、保守系議員から問責決議案が提出されました。「違法なことを言う知事」と“犯罪者”扱いされてもいます。ネットでもそうです。
法律的にいえば、最高裁の判断に応じるかどうかは、自治体の判断になっています。それに応じなければ、最終的には代執行です。国が代執行するのかどうか、焦点です。沖縄の米軍基地は、「銃とブルドーザー」で民意を踏みにじってつくられました。今度は、「日本政府が、それをやるのか」。
短期的には日本の法律に負けることになるが、国はその歴史の審判に耐えられるのか。「岸田首相、米軍と同じ立場でやれるものならやってみろ」と、私たちは知事の判断を評価し、全国の仲間に呼びかけたいと思います。一番苦しいのは、玉城デニー知事です。日本は三権分立、「立法、司法、行政」と言いますが、私たちから見ると、この三権が沖縄に襲いかかっています。そして沖縄県民を「非国民、反日、中国派」などといって攻撃しています。この国のおぞましさ、78年前の戦争で「国のために死ね」と捨て石にされました。今また、「国家防衛の盾」になれという国に対して腹が立ってしようがない。あらゆる手段をもって反対したいと思っています。

「本土復帰」は何だったのか
51年前、沖縄は日本に復帰しました。なぜ、こんな国に復帰したのか。日本は祖国なのか。日本は祖国たり得るのか。沖縄に犠牲を強いる国ではないのか。50数年前に復帰運動をおこなった先輩たち聞きます。「他に智恵はなかったのか」と。こんなおぞましい国に喜んで帰ったことに、「ふざけるな」と言いたい。私たちは、「日本人ではない」と言ってはいませんよ。
今、沖縄では、戦争するから「お金を出すから、出ていってください」と言われています。どこに出ていくのですか。先日の新聞に、鹿児島県知事と松野官房長官が沖縄・離島の12万人の受け入れをめぐって協議したと載っていました。与那国、石垣、宮古からの疎開が現実の問題として可能かどうか疑わしくてなりませんが、沖縄島の140万人の行き場はありません。空港、港湾を拡張し、巨大なシェルターをつくろうなどと計画されています。しかし自衛隊、軍隊は住民を守ることはありません。住民を守るのは役所の仕事です。戦争になれば、戦前と同じようになります。

宮古、第8師団長の墜死が示したこと
今年4月に宮古で自衛隊ヘリコプター墜落事故が起きました。自衛隊第8方面隊、師団長はじめ幹部が亡くなりました。なぜ熊本第8師団長が宮古を視察し、墜落で亡くなったのか。戦争になれば、沖縄も、熊本もありません。(熊本8師団が真っ先に出動し)戦う、それがわかりました。
アメリカ軍は、「台湾有事」と言いながら、沖縄の基地から撤退、逃げ出しています。極東最大の基地である嘉手納基地から、F15戦闘機や海兵隊8000名、米軍家族も移動しています。沖縄が戦場になれば、中国との距離が近すぎて危ないから、グアムやハワイに逃げ出しています。
今はアラスカ、ハワイから米軍機が巡回でやってくる、固定配備からローテンション配備に代わりました。その空(あ)いたところ埋めているのが自衛隊です。実際、前線で戦うのは自衛隊です。そのことは「安保3文書」にはっきり書いてあります。国家防衛戦略には、「わが国への侵攻が生起した場合は、主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、阻止・排除する」となっています。日米安保はアメリカが日本を守るというのが建前ですが、この文書では「自衛隊が主として戦う」となっています。だから、戦争が起これば「米中戦争」ではなく,「日中戦争」になります。
岸田首相は、それがわかっているのか。沖縄の40近くある島からミサイル攻撃をする、または反撃されるということです。米軍は、ミサイルで攻撃をし、次々に島を移動していきます。オスプレイで島々を移動しながらミサイル攻撃をします。そういう日米共同演習が行われ、オスプレイが島々を移動しています。
みなさん、こんなアメリカに使われてはなりません。アメリカの戦略研究所が「中国と戦争になれば」という想定をしています。結論は、「日本がなければ、中国と戦えない」ということです。アメリカは、「台湾有事」「中国が攻めてくる」と言いあおっていますが、そこに狙いがあると思っています。

有事、戦争ではなく外交、友好を
東南アジア、アセアン諸国は、中国との間で日本のように緊張関係はつくらないという立場をとっています。アメリカ、中国という大国の間で「どちらにつくか」という選択はしない。中国ともアメリカとも親しい関係をつくるという知恵を働かせています。日本も、アセアン諸国と一体となって、「アジアを戦場にするな」と言わなければなりません。日本がそうすれば、大きな力になりますが、日本だけがアメリカのお先棒を担いでいる。そのことを考えると、いかに外交の力の大きいか、日本はアメリカの言いなりです。アメリカにつくと危ない。ウクライナやイスラエルをみれば、わかるように巨額の軍事援助をしています。戦争になれば地獄をみるのは、台湾、沖縄、九州全土です。アメリカは巨額の利益を得ます。私の感覚で言うと、日本の官邸よりもアメリカの大統領府の言うことの方がよくわかります。トランプも悪かったが、バイデンはもっと悪い。
戦争になれば、日本の若者が死んでいきます。戦後78年を経ても、アメリカから自立も独立もできない。アメリカのシンクタンクは(日本の軍事予算を)「GNP2%から3%へ」と言っています。「これからも、アメリカの兵器をどんどん買う」ということです。「その兵器を使って戦争をする」ということです。

政治を変える あきらめない
今、沖縄の新聞では、毎日のように日米共同訓練のことが報道されています。「米軍艦船がどの島に来ている」「オスプレイがどこに飛んできている」「ミサイル訓練をしている」「それに抗議している住民が機動隊に排除されている」などというニュースばかり。胸が痛いです。
このような自民党政治を考えなくてはなりません。政治を見捨てたら、地獄を見るしかありません。歯を食いしばってでも「政治に食らいついていく」ことが大事です。そして戦争への流れを変えていく。そのために、私は全国を回っています。みなさん、団結し、抵抗していきましょう。「決してアメリカの言いなりにはならない」と。そうすれば、流れを変えていくことができます。

「戦争は沖縄、南西諸島」と思っていませんか
米軍準機関紙『星条旗新聞』が、「沖縄の基地は中国との戦争で生き残ることはできない」と米政府元高官の見解を掲載しました。米軍の戦略の見直しが進んでいます。有事と言えば「南西諸島、戦争は沖縄でするものだ」「関係ない」と思っているかもしれません。「前の戦争も沖縄で終わった」「自分たちは大丈夫だ」と思っていませんか。
自衛隊の基地、与那国にミサイルも配備されます。与那国に150人、石垣島にミサイル部隊500人から600人、宮古島にミサイル部隊700人から800人。沖縄本島にもミサイル部隊が配備されます。そして奄美大島にもミサイル部隊550人、馬毛島には米空母艦載機の訓練基地。九州に渡り新田原は米海兵隊・有事展開拠点化、福岡・築城基地も米海兵隊・有事展開拠点化、佐賀空港にはMV22(オスプレイ)17機が配備され、佐世保には水陸起動団2100人が配備されています。
そこから考えると、九州全域が戦場になることが想定されています。そして岩国、広島が、日本全土の在日米軍基地が動員されます。自衛隊の資料でそうなっています。マスコミは「沖縄だけが戦場になる」かのように刷り込んでいますが、そうでしょうか、だまされてはなりません。米軍は後方に下り、自衛隊が前線に置かれ、戦争を行うのです。
その流れを、どう止めるか。私たちが那覇で「県民のみなさん、やがて戦争がきます」「県民の団結で止めましょう」「アメリカの盾になってはなりません」「自衛隊の諸君、戦場に行くな」「みんなで戦争を止めよう」と言っても、誰もあまり振り向いてくれません。チラシを配布しても「大丈夫、大丈夫」と言われます。
何が大丈夫ですか。そう思いますが、従来の運動のまま駄目です。私はネット上で「非国民」になっています。「かかわったら大変だ」と思われています。

若い世代とともに 「ゆるやかに、したたかに」
そこに、沖縄の若者たちが出てきています。11・23県民平和大集会のチラシを見てください。若い女性2人が載っていますが、沖縄県内の市町村議員です。超党派で「辺野古新基地建設に反対し、沖縄の自治の底力を発揮する自治体議員有志の会」をつくり、今120人に増やしています。
その代表2人、若いお母さんです。9月のキックオフ集会には20人ほどが参加しました。多くの女性たちが参加し、子どもたちが壇上で「お母さん! ママ!」と騒ぐような集会でした。変わった集会になったなあと思いました。
その集会の手づくりプラカードがチラシに載っています。「平和な島で子育てさせて」「ミサイルよりもおむすび」「琉球の島々は対話による平和を求め続けます」「みんなが笑顔でいられますように」。
今回、県民の会を立ち上げ超党派で進めています。県民の会の共同代表には、瑞慶覧長敏さん、具志堅隆松さん。「やわらかい」運動が始まっています。「ゆるやかでありながら、根はしたたかな」運動づくりを進めています。