金平茂紀さん=10月15日、京都市内

(10月15日、反戦・反貧困・反差別共同行動 in京都での発言より)
日本は戦後78年間、曲がりなりにも戦争をしませんでした。戦争しないことを決めた戦後が、急速に変質しています。戦後の枠組みが無効になり「新しい戦前」が始まっているのではないか。
日本社会は異論や少数意見や反論を許されなくなりつつある。こうした状況では、「正気を保つ」、「頭を冷やす」のは大変なことです。
今年になって戦後を体現してきた人たちが次々と亡くなっています。私と同世代の坂本龍一さんもそうです。彼は2002年に「アンダー・クールド」という曲を発表しました。「冷やし足りない」という意味です。「9・11」をニューヨークで目撃した坂本さんは、アメリカ国内が報復感情で覆いつくされる中で、きれいなメロディーに乗せて、自分の思いを伝えようとしました。
いま「イスラエルの9・11」と言われています。恐らくイスラエルはガザへの地上侵攻をやるでしょう。そうなれば、夥(おびただ)しい人が亡くなるでしょう。そういう瞬間に私たちは生きています。
後世の歴史家は、「2022年が戦後と新しい戦前の転換点だった」と言うでしょう。2月24日のロシアの侵略戦争と、7月4日の安倍晋三元首相の銃撃殺害です。こうした大事件で、人びとが冷静な判断ができなくなっているときに、日本を戦争のできる国に変えようとしています。
「ウクライナを見ろ、侵略されたら戦争で相手を打ち負かすのは当たり前だろう」と。「憲法9条のような『お花畑』みたいものをいつまで守っているのだ」と。安倍元首相の功罪の検証作業をストップさせ、神格化し、その遺志を受け継ごうと言い出しています。
ウクライナ戦争は泥沼化しています。「停戦」や「休戦」を言うとすれば、「お前はロシアの肩を持つのか」と非難されます。私は一刻も早く停戦か休戦で戦争が終わることを祈っています。いまモスクワでポスト・プーチンが公然と語られています。独裁者プーチンと心中しようと思っているモスクワ市民はいないと思います。
ガザの事態を前に言うべきことは、「頭を冷やせ、冷静になれ」、「殺すな!」です。
意見の違いを認めることは難しいが、内輪でいがみ合うことで喜ぶのは誰か、ということを見極めなければなりません。