
沖縄の海中の景色は陸上よりきれい。サンゴや魚などが彩りをなしています。辺野古・大浦湾の海も、カヌーを漕いでいるときに海中をのぞく瞬間があり、感嘆しました。冬などは海藻のホンダワラが電柱のように立ち上がり揺らいでいると聞きました。
10月24日、沖縄防衛局は環境監視等委員会で、大浦湾側に移植された絶滅危惧種のオキナワハマサンゴについて5年間行われたモニタリング調査の結果を報告しました。18年に移植された9群体のうち、現在も生き残っているのは2群体だけ。そのうちの1群体は「全体的に白化が見られる」という、生き残りが危ぶまれる状況です。
防衛局が示した最終的な評価は、移植先に元々生殖していたサンゴの死亡率と同等であることなどを踏まえ「移植先において十分に順応している」などと総括しました。
びっくりする結論です。絶滅危惧種のオキナワハマサンゴの移植は失敗ではないのか。どうしてこのような結論になるのだろうか。
国は移植許可を強要
5年前というと翁長知事の頃です。この埋立て予定区域内にあるサンゴの移植は工事の進捗に影響する事態になっていました。移植しなければ、工事の影響で死滅した場合、県の責任を問うという圧力もあったと記憶しています。
自民党、国の圧力と巧みな操作で、沖縄県が移植を許可せざるを得なくなりました。許可されるや、環境監視等委員会の見解を得て、夏場の海中温度が高い時期に移植するなど無茶なことまでやってのけたのです。
あれから5年。ハマサンゴ9群体のうち、辛うじて残っているのは1群体だけだという。それを「移植先において十分に順応している」と言う。国はこんな盗人猛々しい強弁をするのです。それが今の国の本性なのでしょう。沖縄県外の各自治体はどう感じるのでしょうか。
軟弱地盤域に8万群体
ところで、サンゴ類の移植については、まだ係争中のものがあります。辺野古の軟弱地盤がある大浦湾側には、まだおよそ8万4000群体のサンゴが棲息し、この移植を防衛局は申請しています。県は、当然許可しないため、例によって農林大臣の是正指示が出され、県が違法な国の関与だとし裁判になっています。その裁判中、防衛局は同じ10月24日の環境監視等委員会へ、移植前に護岸工事を実施した場合の影響を調べたシミュレーション結果を示し、「工事に着手してもサンゴ類に影響しない」(防衛局担当者)として報告しました。防衛局は護岸工事を先行実施する考えです。
環境監視等委員会は、ノーと言わなかった。この人たちは大浦湾の海中を見たことがあるのか。専門性をかけて発言しているのか。サンゴはただ綺麗なだけではない。海の生態系を守り海の酸化を防ぎ、地球の温暖化を防止することに寄与している。それらを考えると、防衛局の手順に何も言わなかったことは、沖縄に対する責任だけではなく、日本全体、地球全体に対する責任がある。今後、この委員会を監視し責任を問うことが必要かもしれない。
(富樫 守/10月29日)
