世界各地で難民や貧困について取材するフォトジャーナリストの安田菜津紀(なつき)さんの講演会が11月3日、滋賀県大津市で行われた。以下、講演要旨を紹介する。 (今津)

未来に何を残すか

フォトジャーナリストとは、どのような理念や社会を未来に残せるのかを考えながら、写真を通して様々な人びとの声を伝える仕事。その仕事を選ぶきっかけは高校2年のとき。「途上国」の恵まれない子どもたちを支援するNGO「国境なき子どもたち」から「友情のレポーター」として、カンボジアに派遣された。内戦で破壊された社会で、貧困ゆえに売り買いされる子どもたちと出会った。大学進学後もカンボジアとシリアに通った。
シリアは美しい国だった。当たり前の日常があった。それがアラブの春から遅れて、激しい内戦になった。

〝大きい人たち〟

シリアでは「ウクライナほど関心を集めないのは、肌の色、目の色、宗教が違うからか」と問われた。ダマスカスの郊外で爆弾の直撃を受けた子どもたちは、兄が即死、弟は目を、妹は足を失った。幼い子どもたちは私に、「子どもは、何も悪いことをしていない。こんなことやめてほしい。〝大きい人たち〟にそう伝えてほしい」と言った。
三つどもえの内戦になっているシリアでは、どの勢力が爆撃しているのか子どもたちには分からない。だから〝大きい人たち〟と言ったのだ。

ダブルスタンダード

パレスチナではイスラエルによる占領と搾取・入植が行われており、圧倒的な力の不均衡がある。ガザは、「天井のない監獄」と言われ、東京都23区の3分の2の面積しかない土地に220万人が閉じ込められている。そこに爆弾が雨あられと落とされている。友人は、生まれたばかりの子どもを抱いて南へ逃げたが、「希望を失っている」と連絡があったまま、連絡が取れなくなった。
パレスチナの友人は、「ウクライナでは侵略に抵抗した人は英雄と言われるが、ガザではテロリストと言われる」と国際社会のダブルスタンダードに憤った。ロシアには制裁するが、イスラエルには何もしない。10月27日の即時停戦の国連決議に日本は棄権した。日本も問われている。

語り続ける

東日本大震災の当日、私はフィリピンにいて、義理の両親が住んでいた陸前高田が壊滅したというニュースを聞いた。義母は亡くなった。当時、多くの国から支援を受けたが、ガザの子どもたちも支援を送ってくれた。また仮設住宅に住んでいる人が、シリアの冬の話を聞いて服を送った。
現在の日本の人権状況を見ると、何とかしなければと思う。語り続けることはやめない。