10・21「とめよう! 戦争への道 めざそう!アジアの平和 2023秋 関西のつどい」でフリージャーナリストの布施祐仁さんの話を聞いた。
布施さんは、バイデン政権が発表した「国家安全保障戦略」(2022年10月)に岸田大軍拡の本質があるという。2017年版「国家安全保障戦略」は「中国とロシアが米国の影響力と利益に挑戦している」としていたが、22年版では中国を「最大の脅威、競争相手」と位置付けた。
米国の戦略に合わせて作ったのが、昨年末、岸田政権が閣議決定した日本版「国家安全保障戦略」だ。米国の対中国軍事戦略は第一列島線に同盟国がミサイルを配備しミサイルのネットワークを築くことである。具体的には南西諸島にミサイルを配備し、「ミサイルの壁」で中国軍を東シナ海に封じ込めるというもの。これに完全に合わせる形で自衛隊が動いている。「台湾有事」では、海兵隊は南西諸島の島々に分散移転し、そこにミサイルを設置して中国の軍艦などを攻撃する。南西諸島がまるごと米軍基地として使われる。海兵隊は島から島へと移動を繰り返し、敵の反撃を回避しながら戦闘を継続するという。その戦闘に自衛隊も参加する。
米国は中国本土へのミサイル攻撃も想定している。これに追随して日本も長射程ミサイルの大量取得に乗りだした。ミサイルを撃てば、当然反撃される。日本が戦場になる。米軍の「インサイド・アウト防衛構想」では、中国のミサイル攻撃を回避するため、在日米空軍・海軍の主力はいったん日本から脱出する。これがアウトサイド部隊。それでは中国のミサイル射程圏内でたたかうインサイド部隊はどこが担うのか。自衛隊だ。日本政府は自衛隊員の命に責任を負うべきはずだが、米国政府のいいなりになっている。
台湾有事は起きるのか。中国の基本方針は「平和統一」だが、「台湾独立」は武力行使してでも阻止する。しかし、台湾の現政権は「独立」も「統一」もしない「現状維持」の立場だ。米国も「一つの中国」政策を維持している。中国が台湾に攻め込む可能性は低い。台湾有事を騒ぎ立てているのは日本だけである。
ASEAN諸国は米国と中国が戦争にならないような外交をやっている。日本は米国に追随して大軍拡と日米同盟強化で中国との軍事的緊張を高める方向に進むのか。それとも、平和憲法を活かし、ASEAN諸国と力を合わせて外交によって米中の緊張緩和を図り、戦争を予防する方向に進むのか。これによって日本とアジア・世界の未来は大きく変わる。日本の選択が今こそ問われている。 (池内潤子)