
福島第一原発事故で、子どもと親たちに無用な被ばくをさせた国と県の責任を問う「子ども脱被ばく裁判(親子裁判)」で2審の仙台高裁は、1審に続いて原告の訴えを退ける不当判決を出しました。判決前の集会で弁護団長の井戸謙一弁護士は、「たとえ敗訴になっても意味のある裁判だった」とその意義を強調しました。(入江友子)
高裁判決を前にした12月2日、大阪府高槻市で「勝利判決を! 西日本集会」が開かれました。会場は開会前には満席。「支える会」共同代表水戸喜世子さんから「勝利判決以外にない。この思いを仙台高裁に届けよう」と挨拶がありました。
弁護団の田辺保雄弁護士は、今年7月に出された国内避難民の人権に関する国連特別報告者セシリア・ヒメネス=ダマリーさんの調査終了報告書の重要性について解説しました。この報告は「日本政府は原発事故後、安心情報だけ提供して帰還のみを促進し、避難者の支援は手薄。国際法の基準に反する」というもの。この報告を無視し開き直る政府の姿勢を、田辺弁護士は批判しました。
裁判で問題を可視化
弁護団長の井戸謙一さんは、「裁判に頼ると市民運動が広がらないのではという意見もあるが」と前置きして、次のように話しました。
「この裁判は、『被ばく』問題を真正面からかかげた初めての裁判。法廷での闘いを通して問題を広く可視化することができた。学者・専門家による多方面からの立証を行い、被告側の重要人物の尋問を実現した」
「原告側は、放射性物質は法律的には『危険な公害物質』に入っておらず規制基準がないこと、セシウム含有放射性微粒子の存在と危険性が無視されていること、安定ヨウ素剤服用の指示が一部を除いて出されなかったこと、一般人の被ばく限度年間1mSv(ミリシーベルト)を、福島県だけ20mSvとして学校を再開したことなど、様々な角度から被ばくの危険性を科学的に証明した」
「一方、被告側は山下俊一氏(「ニコニコしている人に放射能は来ない」とデマをまき散らした張本人)や、鈴木しん眞一氏(子どもの甲状腺がん多発を原発事故由来ではないと主張)などを証人として出廷させたが、彼らの主張の間違いを尋問で暴くことができた」
「被告側による情報の隠蔽や、被ばくへの不安の声の徹底的な抑圧、小児甲状腺がんの被ばく由来の否認など、課題はまだ多くあるが、裁判は190人(14年提訴当初)の原告を中心に、全国の市民、専門家、学者が力を出し合う結節点となり、被ばくをめぐる闘いのシンボルとなった。たとえ敗訴となっても今後の運動にとって、『負けても意味のある』ある裁判だった」
学校で「安全神話教育」
福島からリモートで緊急報告を行った片岡輝美さんは、政府が県内の学校現場で「放射能の安全神話」を教育し、「子どもを使って『安全神話』を宣伝しようとしている」と糾弾しました。
原告団長の今野寿美雄さんは、「もし高裁で負けても最高裁まで行く」と明るく元気に決意表明。
連帯の挨拶では、4年ぶりに再開した「たかつき保養キャンプ」から、「12年たっても問題は解決していない。これからも保養を続けたい」と報告。原発事故損害賠償関西訴訟原告団代表の森松明希子さんは「世界中が福島の子ども達の今に関心を寄せている。大詰めを迎える各地の訴訟に注目と支援を」と訴えました。会場には満席の100人余、リモートでも50人の参加。熱気あふれる集会でした。
【二つの子ども脱被ばく裁判】親子裁判の他に学校環境衛生基準に、子どもが最も被害を受けやすい放射性物質の基準が示されていないことの違法性を問う「子ども人権裁判」がある。今年2月仙台高裁で原告の請求が却下された。
