
昨年11月、核兵器禁止条約(TPNW)の第2回締約国会議が国連本部で開かれた。ウクライナ、パレスチナへ侵攻した核保有国のロシアとイスラエルが「核使用も辞さない」と表明し、戦火が続く中での開催だった。「核の機構」でもあるNATО加盟国からドイツ、ベルギー、ノルウェーがオブザーバー参加した。核保有5大国の米・英・仏・中・ロは不参加。広島・長崎を体験し米の核の傘下にあり、「保有、非保有国の橋渡しをする」(岸田首相)という日本も、参加しなかった。
条約は2017年7月に採択され、21年1月22日に発効した。発効から3年、93カ国・地域が署名し、加盟は69カ国・地域となった(昨年9月現在)。核実験による被爆の被害を受け、保有大国の圧力を被る「風下」の国や地域も多い。保有国の住民も、核開発や実験により多大の被害を被ってきた。核汚染は、例えばアメリカではウラン・プルトニウムの製造や爆発実験によりネバダ、ニューメキシコ、テネシー、コロンビア川流域など広範囲に広がる。
実験・製造・保有を禁止
核兵器禁止条約は第1条に「核兵器(装置も含む)開発、実験、製造…保有、管理を禁止」する。第4条に「核兵器の全廃」を明示し、「具体的な措置を国際機関へ申告、報告」を定めている。一方で核不拡散条約(NPT/1970年発効)は、「核拡散防止」「原子力の平和利用の促進」を掲げ、5大国が核兵器を独占しようとした。しかし、核弾頭保有数は米1744、ロ1588、英120、仏280(以上は配備数、別に貯蔵数あり)、中350、印160、パキスタン165、イスラエル90、北朝鮮20(以上貯蔵数)、推計12000発と拡がった。(数字:ストックホルム国際平和研究所・22年版)
抑止力論の壁は
核兵器廃絶には「核抑止力論」も立ちはだかる。核があれば相手が報復を恐れ、お互い核の使用や攻撃を思いとどまるという抑止力論に際限はない。「使えない、使わない」抑止力論が正しいなら、持っていなくても同じである。これまでの戦争と軍拡競争を見ても明らか。相手を上回る軍備を持てば戦争にならなかったか。そうではなかった。
昨年5月、G7広島サミットは「核兵器のない世界へ現実的、実践的な責任あるアプローチを採る。軍縮・不拡散を再確認する。不拡散条約は礎石であり、核軍縮、原子力の平和的利用を追求するための基礎である」(核軍縮に関する項/要旨)と宣言を採択した。「核兵器のない世界」を言いながら、保有し続けるという宣言である。広島の地で広島(実は東京)出身の岸田首相が、それに与した。
三たび許すまじ
国際条約だけで核兵器を廃絶できるとは思えない。しかし、禁止条約があり世界が声を上げ行動し続ける意義は大きい。「毒ガスや細菌兵器は非人道兵器」とされ、もし使えば国際社会から集中的に指弾されるだろう。オーストリア核問題担当官のゲルシュナー氏は、「核兵器を特別扱いする理由はない」と直言している。
核分裂の莫大な熱を使い発電する原発も核爆弾、原爆からの転用である。被爆79年。核兵器と核エネルギー使用も含め、あらゆる行動を集め、近未来のうちに廃絶しなければ…。三たび許すまじ。
「核と人類は共存することはできない」(竹田雅博)
