日本で介護ヘルパーの賃金が不当に低いのは、悪しき家父長制の影響により「介護や子育ては家庭内の女性が無償で行うもの」という、女性差別的偏見がいまだに根強いことが大きな原因だ。ジェンダーの観点からも介護ヘルパーの低賃金は大きな課題である。
確かに介護は一般的には「誰でもやるべきこと」であり、またある程度「誰でもできること」とはいえる。しかし公共介護サービスのヘルパーは、高い専門性を求められる。特に認知症の利用者へのケアは食事、排泄、入浴という基本的なことだけでも難しく、発作的にスタッフへの暴力行為が発生することも珍しくない。介護ヘルパーには強い責任感と正確な技術が求められる。それに見合った賃金は払われていない。

事業所閉鎖

「ニセコ地域の賃金高騰 介護事業者は人材難 閉鎖の事業所も」(北海道新聞12/13より一部を抜粋)
国際リゾート地・ニセコ地域で賃金高騰のあおりを受け、介護事業者が人材確保に苦しんでいる。パートの時給2千円は珍しくなく、重労働のわりに低賃金の介護職は敬遠されている。12月1日、訪問介護の事業所が求人難で閉鎖、2事業所が閉鎖や統合を予定、利用者らに動揺が広がっている。
閉鎖した事業所理事長は「働く人が集まらない」「ニセコ地域の賃金の高さ、コンビニなど求人は時給1500円前後、2千円近い仕事も珍しくない」と話している。

低賃金の打開を

こうした「介護体制の崩壊」が全国規模で進行している。最優先は介護ヘルパーの低賃金を打開し、人材を量・質ともに確保することだ。「介護報酬を1・59%上げる」などせせこましい政策ではなく、税金の投入による月7万円の賃金アップが不可欠だ。(淀川一博)