講演する山本栄子さん=2月3日、京都市内

「狭山事件と識字」交流集会が開かれた(2月3日、京都)。山本栄子さん(『歩』『いま、部落問題を語る』著者)、浜野純一さん(狭山事件を考える市民の会・宝塚)から、当時の石川一雄さんの文章や筆記の特徴、狭山事件と部落差別など講演を受け、意見を交換した。(発言は要旨)

狭山事件が起きた1963年から、60年が経過している。石川一雄さんは32年間も獄中に閉じ込められ、仮釈放中。85歳のいまも一貫して無実を訴え、東京高裁に第3次再審を申し立てている。再審請求では「脅迫状」の筆跡鑑定などの証拠、事実調べを求める。石川さんの冤罪は、晴らされなければならない。

石川さんの文字と差別

浜野純一さん 事件当時の石川さんの上申書や供述メモ。石川さんは、ひらがなを正しく表記できていない。「がっこう」を「がこを」と書き、促音表記ができず長音表記も間違っている。「じどうしゃしゅうりこうじょう」が「じどをじやしゆりこをじを」となり、拗音(ようおん)も正しく表記できていない。一方(警察が示した)脅迫状のひらがな表記は、全て正しく書かれている。漢字が多く使われ、当て字を使っている場合もそれぞれの漢字は正しく書かれている。
それより何より、石川さんの上申書(1963年5月21日付)の文章には一カ所を除き句読点がなく、その一カ所も間違っている。小学1年生と6年生が書いた文章を比較してみると、句読点は学校教育を通してしか習得されないとわかる。脅迫状は句読点が正しく表記されている。
この点だけでも、石川さんは無罪判決を受けるべきと言い切れる。
事件当時の石川さんの文字には、彼と家族を貧しさのどん底に蹴落とし、教育を奪った部落差別が刻印されている。ところが裁判官たちは、「社会生活の中で文字を習得することは可能」と石川さんと非識字者の苦しみを切り捨ててきた。裁判官は部落差別と識字について理解してもらいたい。

人と人が理解しあう

山本栄子さん 定年退職してから夜間中学に通い始めました。そのとき読み上げた作文、中学2年の時に書いた作文のテーマは「初夢」でした。「英語と韓国語がペラペラになり、夜間中学のクラスメイトと韓国語で語り合う」という夢です。亡くなったはずのクラスメイトとも手をつないで学校に通います。学ぶことは人を蹴落とすことではなく、支配することでもない…。人と人が理解しあう、そのためにこそ学びがあると思います。

静かに響く水平社宣言

意見交換では、浜野さんが「栄子さんは、差別する人とも会って話をしますね。差別する人は変えられますか」と尋ねると、山本さんは、「人は変えられない。けれど理解してもらうことはできると思う」と答えた。とても大事なことを教えられた。
山本さんが水平社宣言を朗読した。暗唱での静かな宣言だった。栄子さんの宣言は、参加者に聞かせるというよりも、自分の心に語りかけているようだった。今まで読んだり聞いたりした、どんな宣言よりも強く心に響いた。(狭山再審を求める市民の会・こうべ/高橋亮也)

第8回・狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西
2月23日(金) 西成区民センターホール(大阪メトロ四ツ橋線「岸里」駅すぐ) 資料代500円/オンライン参加申し込み→sayama.kansai@gmail.com/開場12時 開会13時 講演「石川一雄さんの歩みと私たちの課題」(黒川みどり・静岡大教授)/石川一雄さん・石川早智子さん(ビデオメッセージ)、伊藤睦、袴田ひで子、青木恵子、西山美香の各氏ほか。