日本よりも民主化運動が力を持っている韓国で、ジェンダー問題をめぐって差別反動が起こっている。男女平等が進み、就職などでの「男の特権」を得られなくなったことに不満をもつ若い男性が女性を敵視して、憎悪犯罪(ヘイトクライム)に手を染め、社会問題となっている。
昨年の韓国大統領選で尹錫悦(ユンソンニョル)氏は「反フェミニズム」を公約に掲げ、若い男性票を取り込んで勝利した。尹大統領は女性への暴力防止に関する来年度予算を削減。差別反動は頂点からの攻撃によって始まり、世論を形成していったのだ。
「フェミニストは女性優位で男性嫌い」「髪の短い女はフェミニスト。彼女らを排除すれば(男の)不幸を解消できる」と短髪の女性に憎悪を抱き、暴行を働くといった事件も起こっている。東京五輪で3冠に輝いた女性のアーチェリー選手が短髪だったことを理由に、「メダルを返せ」とSNSで執ように攻撃された。
もちろん韓国の女性たちは黙ってはいない。髪を切ってショートヘア姿の写真をSNSに投稿するキャンペーンで対抗した(写真上)。「やるならやってみろ!」と。
憎悪犯罪は最も卑怯な犯罪である。自らの「惨めさ」に対する怒りを、それを強いた原因である差別や階級社会や権力者の横暴に向けるのではなく、ショートヘアの女性を憎悪し、傷つけることで鬱憤(うっぷん)を晴らしているのだ。「なんと惨めな男たちであることよ」と鼻で笑って済ませたいが、そうも言ってはいられない。そんな男たちの票が山と積み上がって尹大統領を生み出してしまったのだ。韓国の女性たちに連帯し、憎悪犯罪を許さない闘いを!(当間弓子)