
能登半島地震で、志賀原発1、2号機の外部電源を受けるために必要な変圧器の配管が破損した。1、2号機で計7100リットルの油が漏れ、外部電源の使用が一時できなくなっていた。また1、2号機の燃料プールの水が計420リットルあふれでた。揺れの加速度は1号機で957ガル、2号機で871ガルを測定しており、想定を上回る揺れが観測されていた。
原発の周辺住民は大事には至らず、「無事でよかった」と胸をなで下ろす一方で、「もし原発が運転中で過酷事故が発生すれば、道路の寸断で避難できなかった」と不安の声が上がっている。
志賀原発では99年6月18日に原子炉の制御棒3本が抜け落ち、国内初の臨界事故が発生した。北陸電力は「公表すると3カ月後の2号機建設の行程が遅れる」という理由で8年間もこの事故を隠蔽していた。事故の報告と原因究明が行われていれば、3カ月後の東海村JCО臨海事故(2人死亡、600人が被ばく)は防ぐことができたとも言われている。
2016年には有識者調査団が「志賀原発の原子炉建屋直下に活断層の可能性がある」と報告。その審査が長引いていた。23年に原子力規制委員会は、「活断層ではない」という北陸電力の報告を「妥当」とする不可解な判断を出している。規制委の判断がまったく妥当ではなかったことが今度の地震で明らかになった。
今回の地震では、検査中だったため、原子炉に燃料棒が入っていなかったが、もし稼働していたら、変圧器の故障、配管損傷、原子炉冷却水の配管破断などで大事故を引き起こしていた可能性もある。また地震後、冷却装置の配管の異常の有無に言及がないのは不自然だ。北陸電力は運転中に今回と同様の地震が発生した場合のリスク評価を行うべきであり、政府はそれを厳しく求めるべきだ。
地震後の北陸電力の発表にも不可解な点が多い。「変圧器の火災が発生したが消火済み」から「火災はなかった」に変更した。また変圧器から漏れた油量を、当初発表の5倍以上に訂正した。さらに、原発敷地内に海水を引き込んでいる水槽の水位上昇を「確認されていない」から「3メートル上昇」に訂正した。
北陸電力はまたも隠蔽を行っているのではないか。彼らが隠ぺいしたいのは志賀原発が稼働していれば過酷事故の可能性が高かったということではないのか。原発周辺のモニタリングポストが18カ所で故障し、道路は寸断されていた。事故が起きていれば避難は不可能だったのだ。(石田勝啓)
