ウクライナ南部・ヘルソンで取材する西谷さん=2023年10月

ウクライナやガザなどで精力的に取材し、私たちが知るべき事実を伝えているジャーナリストの西谷文和さんの講演を聞いた。(2月11日、大阪市内の集会。主催は「日の丸・君が代」強制反対大阪ネット)

戦争に勝者はいない

ウクライナ軍とロシア軍がミサイルを打ち合った痕跡(写真上)や、現地の人びとの想いを映し出した映像が胸を打つ。ウクライナはアメリカから供与されたミサイルでロシアを破壊している。お互いに殺し合ってもこの戦争に勝者はいない。多くの人びとは比較的安定しているポーランド国境付近に避難している。ザポリージャ原発をはさんで双方のミサイルが飛び交う。大手メデイアの原発報道は少ない。この戦争で暴利を貪っているのは武器商人だ。一刻も早く戦闘を止めなければとの思いに駆られる。
続いて、イスラエルとパレスチナの歴史的経過が説明される。イギリスの無責任な三枚舌外交によって、アラブとユダヤの間に分断と対立がもたらされた。70万人のパレスチナ難民を生み出したイスラエル建国から75年間、戦争状態が続いている。西谷さんが2002年にイラクに取材に行ったときから、イスラエルは、ガザ地区を包囲する壁を造っていた。全長7000キロもある。とんでもない人権問題だ。壁の所々に隙間があり、そこが検問所になっている。救急車も通さない検問所。救急搬送中の妊婦が亡くなることも多い。

中村哲さんの言葉

戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。戦争を終わらせるために奮闘した日本人が中村哲さんだ。アフガニスタンの内戦を終結させるためには人びとの生活の安定が第一だ。中村さんは住民とともに用水路を作って、60万人に命の水を届けることに成功し、乾いた大地を緑のオアシスに変えた。
01年、中村さんは自衛隊のアフガニスタン戦争への協力に反対して、国会で次のように発言した。「アフガニスタンに自衛隊を送らないでくれ。日本は平和な国だからと日本人は守られているが、人殺しの軍隊が行ったら、危なくなる。憲法9条を守って外交で解決すべきだ」と。13年前の中村さんの訴えは、今の私たちが進むべき道を示している。(佐野)