
元高槻市議・二木洋子さんの講演(1月16日)から、15年にわたる大阪の維新支配が市民生活に何をもたらしたのかを明らかにする。(想田ひろこ)
公務員の削減
「民間にできることは民間に」と言いながら、公務員の削減と制度改悪を一挙に推し進めた。
大阪府の正規職員は07年度の1万0368人から20年度の7276人まで減少させられている。わずか13年間で3000人強の削減は、非正規雇用を増やしたとしても住民サービスの大幅な剥奪以外にない。また、非正規雇用への転換は(女性労働者が大半)、不安定で安価な労働者への攻撃が行われている証左だ。
どれだけ大阪府の住民サービスが過疎化しているかを、他の都道府県の人口10万人あたりの職員数で比較すると、まさしく全国で最低である。東京都は大阪府の3倍、兵庫県は2・5倍の職員が確保されている。この差は何なのだ。
新型コロナへの対応を見ても、人口100万人あたりの死者数全国一の不名誉な実態がある。保健所の数が大阪府は61カ所からなんと18カ所に、大阪市は24カ所から1カ所(!)に削減されている。そこで働く大阪府の保健師の数は人口10万人あたり27・7人で、全国で2番目に少ない(全国平均44・1人)。医療の危機だ。それでいて吉村知事は連日テレビに出演して「いかに頑張っているか」をアピールして人気を博した。テレビや新聞と維新の癒着がはなはだしい。メディアの監視機能はどうなっているのだと声を大にして言いたい。
さらに数字を見ていくと、労働運動の弾圧と破壊の実態が顕著に分かる。
大阪府内の地方公務員の組合数及び組合員数の推移は09年で156組合で4万5092人。21年度では144組合で2万7976人。わずか12年間で12の組合がなくなり、組合員は1万7116人(37%)もの減少が見られる。「先生のなり手がいない」と社会問題化しているが、学校教育にかかわる組合員は、この12年間で1万7502人(44%)の激減である。かつて日教組はあれほど強かったのにとため息がでる。
これは橋下知事以来の専制的な職員支配・管理にこそ原因がある。12年3月には職員基本条例、教育行政基本条例、府立学校条例をもってさらに支配・管理が強化された。「幹部職員の公募制・任期制」では、現場の知識も経験も皆無といった全く場違いな人事が乱発された。
「成果主義人事評価の徹底」では能力主義の導入により職員を分断し、「系列による懲戒・分限処分の基準と公開」では処分を乱発し、労働者の団結を打ち砕き、そしてついに「給与水準の切り下げ」が敢行された。
公共施設を破壊
大阪人権博物館(リバティおおさか)は1985年に開館し、被差別部落、在日コリアン、公害被害者、ハンセン病患者、薬害被害者などの資料を展示し、日本で唯一の総合人権博物館として170万人の来館者を迎えてきた。子どもたちの人権学習の何よりの場であった。ここはもともと被差別部落出身の有志が土地や資金を寄附して作られた旧栄小学校の跡地に建設されたものである。それを橋下市長(当時)が、「僕の考えに合わない」「公益性がない」として市の補助金を打切り、年間2700万円の地代をリバティおおさかに要求して提訴したのである。リバティおおさかは、こうして2020年5月閉館に追い込まれた。橋下氏と維新に問いたい。府民の生活を破綻させ、依存症に追い込むカジノのどこが「僕の考えに合うの」か、どこに「公益性がある」と言うのか!
リバティおおさかは「差別のない世の中を作りたい」と被差別民衆から託された財産である。大阪が世界に誇れるものはIRカジノなどではなく、リバティおおさかこそではないか。
維新が「身を切る改革」として攻撃した対象はこれだけにとどまらない。センチュリー交響楽団の4億円の補助金廃止。国際児童文学館を閉館し中央図書館の一角に移転。ピース大阪の補助金を削減し、展示を大阪空襲中心に改変(侵略の加害性を示す展示は撤去)。男女共同参画事業の削減(ドーンセンターの機能縮小)等など。
以上を見ると、子どもの健やかな育成や府民の憩いの場、男女平等などの文化的な営みが次々と切られているが、それはまさにファシストの感性、価値観以外のなにものでもない。
在沖海兵隊に「風俗の活用」を提案して米軍司令官を凍り付かせ(13年5月1日)、その後も「慰安婦制度は必要だった」(同年5月13日)と公言してはばからない橋下徹氏(とその仲間)にして初めてなしえた所業だ。
「身を切る改革」の最後に、その欺瞞性に腹立ちを禁じ得ない事例を紹介したい。
維新は年間50万人もの利用があった青少年会館を潰し、その跡地を長谷川工務店に売却。予定額80億円をなぜか32億円にまけて、今は494戸建てのマンションになっている。公共性を踏み潰して大企業に儲けさせる。「この契約には利権が絡んでないのか?」と誰もが考えるだろう。(つづく)
