
福島第一原発の事故による汚染水の抑制について、建築家の竹山清明さんの話を聞いた(2月18日、芦屋市内)。竹山さんは、ドーバー海峡トンネル工事のプロジェクトにも参画した土木・建築の専門家。福島第一原発の山側から、メルトダウンした原発の中を通り、海に流れる地下水の汚染をどう抑制するか、現状と対応策を土木・建築技術者の立場から次のように話した。
土木建築専門家が指摘
――まず政府・東電の排水抑制策は、どうなっているか。「原発手前側、海側のサブドレン(建屋近くの井戸)からの地下水汲み上げ(水を汚染源に近づけない、海への流れを抑制する)」「地下に凍土壁を造り、原発周辺への地下水の流入を抑制する」など。しかし、井戸、薄い凍土壁では止められない。地中温度は0℃未満で推移している。マイナス30~40℃くらいの凍結が必要だが、現状は凍結工法という名前だけではないか。東電公表の「汚染水日量150立方メートル」は、どうもあやしい。
地下水位を下げる方策の基本的な考え方。「アルプス処理」が行われているが、トリチウム水の海洋放出は、できれば避けたい。地下水のデブリへの接触を断つ必要がある。コンクリートの地中連続壁で原発を囲い、地下水をデブリから十分に下げる。その「囲い込み」は、いまの建築技術ならできる。
遮水のための1・5メートル厚さの連続壁を内方5メートル程度離し、平行に設置する。高さは場所により25~50メートルとする。コンクリート壁の間は土を除き、鉄骨の支柱や梁を入れ足場を設ける。壁の間に空間を設けるのは、しみ出る地下水を底に集めポンプで放出するためと、壁の設置やメンテナンスの重機が動けるスペースを確保するため。この二重壁により地下水は概ね遮水できると思われる。凍土壁だけでは、しみ出す水の状況が不明になり止められず、遮水効果が薄い。
二重壁でコスト減
この二重壁の場合のコストは約30万円/㎡、支保工など約10万円/㎡。深さ平均40mとすれば1mあたりの工事費は、40万円×40m=1600万円。総延長2100メートルを乗ずると約340億円、土木工事の経費をかけても1000億円に収まるであろう。
東電や政府の最新対応策資料を入手し、対策案を練り上げたい。反原発運動のみなさんにも情報を発信し、できれば共有したい。社会的な働きかけ、マスコミ、政党にも。――
技術者の立場から「…止められない」「なんとか抑制」「できれば避けたい」という言葉が。「核と人類は共存できない」という核・原発の持つ深刻さ、それでも使うのか。科学や技術で解決できるのか。「核は廃絶あるのみ」を、あらためて思い知らされた。(竹田)
