1880年に五代友厚が創立した大阪商業講習所をルーツに持つ大阪市立天王寺商業高校も2014年3月に閉校となった

元高槻市議・二木洋子さんの講演(1月16日)から。最終回では、15年間にわたる大阪の維新支配によって、教育と議会がいかに破壊されてきたかを明らかにする。(想田ひろこ)

公立高校の削減

深刻な問題として公立高校の廃校化がある。
「私立学校も含めて授業料の無償化」は、府民サービスの向上と思いがちだが、騙されてはいけない。裏がある。
現在裁判中だが、維新は大阪市立高校21校を無償で府に移管し再編を考えている。その上で府立高校の定員割れが「3年続けば廃校」にするとして、2022年度までに17校の廃止を公表した。つまり私立高校を無償化することで経済的に入学しやすくし、府立高校の定員割れを「誘導」して、その結果廃校に追い込むという計画である。教育の民営化はどういう結果をもたらすのか、しか確と見極めなければならない。
そして私が何よりも心を痛めているのが、夜間学校の廃絶化や朝鮮学校への差別と冷遇である。貧困や苦難の人生でやっと教育に巡り会えた夜間学校の生徒が、「学ぶたびに悔しく、学ぶたびに嬉しく」と語られた場を奪うなんて断じて許せない。また朝鮮の植民地化の上に言葉も氏名もあらゆる民族性を奪った歴史を持つ日本が、朝鮮学校に必要な費用の全てを公的に補償するのは当たり前だ。

議会制民主主義の否定

府議会・市議会で過半数を握っているということは、政治の独裁的運営が可能になるということだ。維新は両議会で議決を経ずに予算を執行する専権処分が非常に多い。2020年度の資料だが、全国の都道府県の専決処分率ワースト5は大阪府(46・8%)、埼玉県(19・8%)、千葉県(19・7%)、東京都(17・9%)、福岡県(13・4%)。ここでも大阪府は断トツ。約半分の議案が専決処分されている。正に独裁政治だ。どれほど維新によって議会制民主主義が蔑ろにされ、府政が私物化されているかよく分かる。
しかも維新が打ち出す政策の意思決定システムが全く不明である。大阪府特別顧問や特別参与制として27人体制をとって政策を決めているが、彼等は選挙で選ばれた人間ではない。すなわち府民の付託を受けていない。彼等は好き勝手に意見を言う一方で、その責任を取らなくても良い。
中でも上山信一氏は、運輸官僚、マッキンゼー・パートナー、東京都・大阪府・愛知県の顧問を歴任し、橋下知事の頃から維新と濃厚な関係をもっている。維新の看板である「副首都構想」では、上山氏は大阪市役所と共著で『行政の経営分析』を出版するなど、名実ともに政策のトップとして絶大な影響力を持つ。
彼等にとっては、自治体は「経営対象」であり、コスト優先は当たり前であり前提である。しかし、こういう「頭脳」にもとづいた府政から、「庶民のため」とか「弱者の立場」とかの発想が出てくるものだろうか。あり得ない。
最後に大阪府政から離れるが、能登半島地震被災地支援の遅々とした歩みに「これは人災だ」と言いたい。国政はもとよりだが地元の市町村の行政の動きがにぶく感じる。命からがら市役所に避難した住民を「自衛隊が来るから」と追い出して路頭に迷わせたと報道されていた。行政はどこを向いているのか。
「平成の大合併」なるものがあり、石川県では41あった市町村が合併で19まで減らされ、当然公務員の大幅な削減、住民サービスの低下があった。これが被災者支援に影響しないはずがない。「限界集落が増える」とさらなる過疎化を心配して住民が語っていた。大阪の維新による政治の劣化は、大阪だけの問題ではなく今後、全国の問題となっていくだろう。
大阪万博が来年4月13日に迫っている。世論の70%以上が不要論を語っている。この状況に維新はどう立ちまわるのだろうか。民衆のための府政を取り戻そう!〔おわり〕