2011年東日本大震災時の気仙沼市内の避難所の様子=公益社団法人日本ユネスコ協会連盟のウェブサイトより転載

「(広い体育館で)50センチの段ボールの仕切りの区画に男女が隣り合って寝起き/女性の更衣室や授乳スペースなく/女性(妻)の多くは食事や水、衣類の支援物質を受け取る列に並ばされ/災害弱者となりやすい女性や子ども、障害者、高齢者への手厚い対応やジェンダーの視点は完全に欠けていた/夜、男性が毛布に入ってきたり、男の子がパンツを下げられたとそっと打ち明ける女性もいた/支援物資のズボンの裾上げは女性の仕事と決めつけられている。(それ自身も問題ではあるが)その針と糸もなかった…」

13年前と変わってない

これは13年前の3・11直後に福島県北部・郡山市の大規模避難所に最初に入ったときのウィメンズスペース・福島のメンバーの話である(注)。テレビ画面に映し出された能登の避難所の様子は衝撃だった。13年前と何も変わっていないではないか。
福島の女性たちは立ち上がる。避難所運営責任者や行政に改善を求めるが、とても「そんなこと」をやる余裕はないと突っぱねられる。やれるだけやってみようと他の女性団体と力を合わせて「外部から見えない、女性たちがお茶を飲みながら話ができる場所」を設けることにこぎつけた。
これが全国初の災害時の「避難所内女性専用スペース」の開設だった。少しずつ訪ねてくる女性が増え、不安を語り合い、時には笑い声も上がるようになり、そのうちLGBTの当事者も来るようになった。避難所が閉鎖され人びとが仮設住宅に移ってからも、10年を過ぎた今も形は変わるが活動は続いている。

自治体まかせの対策

阪神大震災の時から「災害と女性、性暴力」の問題は女性たちから提起されてきた。各地で大きな災害が続き、また、ジェンダーについての理解も徐々に進んできたことで、16年、政府は、国際的な災害時の基準(スフィア基準)を参考にジェンダー視点を含む「避難所設置ガイドライン」を策定した。しかし、実際には自治体任せで、自治体の防災担当者に、そもそも問題意識がない、あっても予算も人手もないなどなど遅々として改善されていない。
全国の自治体に設置された防災危機管理担当部門の女性職員数は全体の11%に過ぎず、半数の自治体ではゼロ。防災の計画立案にあたる「地方防災会議」の女性委員数もまた10%という。昨年の日本のジェンダー・ギャップ指数は146カ国中125位。その実態はここにも現れている。
劣悪な避難所生活が関連死を多発させることは周知の事実である。災害時であっても、誰もが人間らしく生活し、人としての尊厳が守られるために、ジェンダーの視点を入れた避難所を含む被災者支援のあり方の見直しは不可欠になっている。
災害の多発する今、明日は我が身。自分ごととして語り合おう。為政者には、「防災・減災、被災地・被災者のために金も人も出せ!」と強く求めながら。
次回は「災害と性暴力」をとりあげたい。(新田蕗子)
(注)『FUKUSIMAの10年―震災・原発事故に向き合った市民団体50の物語』(ふくしま連携復興センター編21年3月)。