
1月22日に厚生労働省が在宅介護を支える訪問介護サービスだけ、基本報酬を引き下げたことについて全国的に抗議の声が上がり、国会でも動きが始まっている。
野党議員の追及により、厚生労働省は「2022年度の経営実態調査」について、訪問介護事業所の利益率の分布状況を改めて集計した。それによると、赤字を意味する「利益率0%未満」の事業所は、全体の36・7%を占めた。今回は、この数字の意味を考えたい。
アンケート回収率42%
まず指摘したいのは、この再集計は「黒字7・8%」の根拠となった調査冊子の回収率42%についての結果の再分析だということだ。それでさえ赤字事業者36・7%なのだ。今回の訪問介護の基本報酬引き下げにより、この部分は間違いなく大きなダメージを受ける。
さらにシリーズの前回で指摘したように、人手不足や資金不足になるほど、事業者はこのような調査に対応する余力を失っていく。残りの調査未回収事業所58%を加え再集計すれば、過半の事業者が赤字となる可能性が高い。
次に、この再集計があくまでも事業所数での集計ということだ。大手も零細事業所も同じ1件で数えられている。その影響で、サービス付き高齢者住宅に併設された事業所の数字が極端に「黒字」を押し上げている。報道されたグラフでは「利益率20%~50%」の大幅黒字の事業所が存在することが示されているが、ヘルパーの移動時間および車・バイクの燃料代が介護報酬に反映されていない現行制度で、長距離移動する従来型のサービスではこの利益率は出ない。
こうした、大手による併設型の数字と中小の従来型の数字を切り離して分析し、訪問介護事業所の倒産・事業所閉鎖への対策をとることが必要だ。(淀川一博)
