「ストとは無期限ストが基本だ」と話す西谷敏さん=3月9日、大阪市内

「反組合的使用者に鉄槌を! 正当な労働組合活動に対する使用者側の攻撃に労働者・労働組合・弁護士はいかに闘うか」と題した集会がエルおおさか(大阪市中央区)で行われた。24春闘のプレ企画でおおさかユニオンネットワーク(以下、ユニオンネット)と大阪労働者弁護団(以下、労弁)の共催。
集会のメイン企画として西谷敏さん(大阪市立大名誉教授、労働法)が「労働組合の団体的行動の権利と限界」と題して講演を行った。
西谷さんは冒頭、「憲法28条の団体行動(争議行動など3権)には組合活動が広く含まれているという理解が大切だ」と話した。争議件数は1974年には9851件だったが、2022年には270件、半日以上ストは33件と激減している。組合の抗議宣伝やビラまき行動さえ一般法で禁止されるという状況だ。海外でも組合の行為が「強要・脅迫」とされ、損害賠償の対象として圧力を受けている。
憲法28条は、労働者への抑圧が2つの世界大戦を引き起こしたという教訓のもと、労働者のスト権を原動力とする組合活動を広く「法を越えて認める」というもので、「積極的承認概念」といわれる。その考え方が廃れている。
「ストライキは基本的に無期限ストなのだ」と西谷さんは語気を強める。ところが73年以降の司法反動がストへの弾圧を許し、労働組合に委縮が生まれている。それが労働運動の危機の原因である。
労働運動が労働権を発展させてきたのであって、けっしてその逆ではない。かつては「犯罪」とされてきた労働者の団結や争議・ストを合法化してきたのが労働運動の歴史である。労働基本権によって労働組合を作ることは合法化されたが、それを使って運動を発展させることとは別次元の問題である。たとえ裁判で勝っても、「組織はつぶれ、運動がガタガタ」ではいけない。逆に「裁判では負けても、運動としては発展」ということがある。裁判や法は運動のための手段であり、その絶対視は危険だ。「裁判闘争によって運動・組合がどのように発展したのかが大事である」と西谷さんは強調した。

ストライキ

「なぜ日本の労働組合はストライキを行わないのか」。台湾で開かれた日本、台湾、ドイツ、韓国の労働法学者のシンポジウムで発せられた問いに、日本の識者は答えることができなかった。
その原因は、①企業別組合、②ユニオンと産業別労働組合が現状を打破できていない③市民の無理解、の3つがある。労働組合をつくることが憲法上の権利であることを知っている者は18%(20年NHK調査)。学校教育にも問題がある。
戦前戦後の日本の闘争戦術や、昨今の欧州などで実践されている非組合員を組織した闘い方などに見られる戦術の柔軟さを学ぶべきである。最も重要なのは、組合員の団結(一人一人の確信)を固め、世論の支持をかちとるための宣伝活動だ。

二つの正当性

以上が西谷さんが講演で提起した内容であるが、正直に言って最初は理解しにくかった。それは「限界」という表題にもかかわるが、憲法28条の「積極的承認概念」と、労働組合法第1条で「団体行動」は「正当な行為でなければならない」とされていることの関係にかかわることである。
キーワードは西谷さんが提起した「二つの正当性」である。それは「法令の正しい解釈(学説)」と「判例や労働委員会命令の現状を正しく知ること」の二つである。この二つは双方とも変遷しており、労働組合は司法反動以降の動向を常に注視しなければならないのである。
つまり「職場の力関係に見合った闘いで、組合の団結をいかに拡大するのか」ということだ。そのための組合の教宣活動が重要になる。「二つの正当性論」とは、積極的承認概念の構造に踏まえた現場実践論として整理するとわかりやすい。それは労働運動を発展させるための武器なのである。(森川数馬)