
夢洲(大阪市此花区)に予定されているIRカジノを巡っては、先行の夢洲IR差止訴訟と、後行のカジノ格安賃料差止訴訟が合同で行われている。だが訴訟中にもかかわらず、大阪市はIR株式会社との間で23年9月28日に実施協定、事業用定期借地権設定契約などを締結したため、3月14日の期日で、訴えの変更が行われた。
裁判後の報告会で先行訴訟の荒木弁護士は、「もともと原告らが求めていた『契約は締結してはならない』が不可能になったので、『契約に基づいて土地を引き渡してはならない』、そして『契約に基づいて借地権登記手続をしてはならない』の2つに分けて請求した。当初求めていた『土地改良のための負担の合意をしてはならない』と『土地改良のために一切の支出をしてはならない』という訴えはまだ生きている」と説明。
後行訴訟の岩佐弁護士は「契約は締結されたが、まだ土地の引き渡しや登記はなされていないので、差止め可能な対象が残っている」と説明した。
この実施協定等では、IR株式会社が2026年9月まで、違約金を払わなくても計画から撤退できる「解除権」を依然として持ったままだ。大阪IR株式会社が、銀行の融資や土地に関する適切な措置などの「事業前提条件が成就していないと判断している」というのがその理由だ。今に至るも態度があやふやな会社と本契約(と言えるのかは疑問だが)を結ぶなどありえないことだ。
「事業用定期借地権設定契約」では、天災、戦争などのほか、施設建設が遅れるような重大な土地の瑕疵(かし)によって、「実施協定解除」の局面に陥った場合、大阪府と大阪IR株式会社は免責対象になっているが、大阪市は免責の対象になっていない。
3月28日に万博の工事現場でガス爆発事故が起きたが、夢洲ではいつ不測の事態が発生するかは誰にもわからない。夢洲の地盤そのものの不等沈下は免れないため、大阪市はIR株式会社から建物の建て替えや損害賠償を要求される可能性だってある。そのためにばく大な税金を費やし、市民生活が犠牲にされるのだけは御免被りたい。(堀ちえこ)
