
室蘭工業大学教授で「RAWAと連帯する会」共同代表の清末愛砂さんが大阪市内で開かれた集会で「ガザとアフガニスタンで起きていること、起こったこと」と題して講演した。(3月30日、主催:「とめよう!戦争への道・めざそうアジアの平和 2024春 関西のつどい実行委員会」)
アフガン女性の闘い
アフガニスタンには、RAWA(アフガニスタン女性革命協会)という、ジェンダーにもとづく暴力に抗って闘い続けてきた女性たちの歴史がある。しかし、アメリカはそれを無視し、アフガニスタンの女性は「一方的に虐げられ、沈黙を強いられている」として、「救世主」のように振る舞った。対テロの枠組みでアフガニスタンの「女性解放」を口実に、軍事攻撃を正当化した。そしてアメリカの「自称」フェミニストたちは軍事攻撃を支援した。
1977年にカーブルで創設されたRAWAは、アフガニスタン初の独立系フェミニスト団体だ。2001年にアメリカがアフガニスタンを攻撃したとき、「タリバーン政権は、アフガン民衆によって倒されるべきだ」として、アメリカを批判する声明を出した。
RAWAの活動の目的は、女性の団結の力で社会を変革し、女性の権利を含むすべての人びとの権利と自由が保障される民主的な社会を築くこと、女性の人権を侵害するあらゆる「勢力」を問題化し、女性にたいする人権侵害を果敢に告発することである。
2021年にタリバーンが復権すると、女性の就労の大幅な制限、教育の機会が奪われた。男子は7年生から12年生まで通学が許されているが、女子はそうではない。そのため地下学校を運営している。
清末さんは「女性への抑圧はタリバーンのせいだけではない」と話す。家父長的な社会規範が背景にある。これにたいしてRAWAは、「生きのびる」というしたたかな抵抗を続けているのだ。
パレスチナ人の追放
「ガザで起きていることはアパルトヘイトだ」と清末さんは怒りを込めた。非常に過酷な管理・統制を行うことによって、パレスチナ人の自己決定権が一方的に否定されている。日常生活のあらゆる面が、イスラエルの占領政策によって規定されている。爆撃が始まると注目されるが、停戦後、可視化されない状態で占領が続くと、他者からは見えない。そして、アパルトヘイトが続く。
イスラエルは、ジュネーブ第4条約(占領下における人民の保護規定)の批准国だが、自分たちは占領ではなく管理しているにすぎないと主張している。そうすると第4条約を守らなくても良いとなる。
「イスラエルがやりたいことは追放だ」と清末さんは断じる。パレスチナ人の独立国家樹立をなんとしても妨害したいのだ。そのために人と物流を封鎖し、時どきの大規模な軍事攻撃を行うことによって、独立国家が造られる道を遮断している。こうしてパレスチナ人は自由と尊厳を侵害され、生きる希望が持てない。ガザ追放が達成されたら、次はヨルダン川西岸地区が同じようにされるだろう。
イスラエルの無差別攻撃は「自衛権の行使」か。清末さんは「自衛権の行使というのは国対国の間で言うことであって、被占領地にたいして言うことではない」として「日本政府は間違っている」と批判した。
イスラエルはパレスチナ人がここに住み続けてきたのだという証と存在そのものを消そうとしている。爆撃以外に医療体制の破壊、人道支援物資の搬入制限によって飢餓が起きている。飢餓を戦争の武器として使うのは戦争犯罪だ。
恐怖と欠乏をなくす
日本政府はどうすべきかについて清末さんは、「『全世界の国民の平和的生存権』(憲法前文)に基づき、ガザの人びとが強いられている恐怖と欠乏をなくす行動をすること。憲法98条2項に基づき、国際法に基づく法の秩序・支配が破壊されていることを問題化し、国際法違反に加担しないように行動することだ」と話した。
私たちには、停戦、封鎖解除、オスロ体制終結・占領終結に向けて、政府を動かすことが求められている。(池内潤子)
