
4月上旬に、郷里である石川県能登の宝達(ほうだつ)志水町を訪問しました。その後、奥能登の輪島市、七尾市中島町で仮設住宅建設や被災者の生活支援に取り組む神戸のボランティアグループと交流してきました。宝達志水町は、人的被害はなく公共インフラの復旧も早かったのですが、それでも液状化によって損壊家屋は1500戸を超えていました。
輪島市へつながる能登里山街道は、被災から3カ月経過しても、輪島市に向かう途中から「行き一方通行」に規制され、しかも至る所が土砂崩れ、夜の走行は非常に危険な状態でした。輪島市では一部仮設住宅の建設は始まっているものの、全体数が不足。さらに驚きは、大火災に見舞われた輪島市河井町です。焼けた住宅ビルはもちろん路上に焼けた自動車、電線にもたれる電柱も放置状態で、解体撤去などがまったく進んでいない状況でした。

仮設建設の絶対的遅れ
阪神淡路大震災時は、震災後3カ月には神戸市の復興計画が決まり、公費解体がどんどん進み、アスベスト被害を心配しなければならなかったような状態でしたから、元旦からの景色が変わらない輪島市の現状には驚かされました。七尾市中島町で生活支援を行う神戸の団体、被災地NGО協働センターの支援基地を訪れました。「仮設住宅建設の絶対的な不足」、さらに「仮設団地に集会所がない」など、これまでの震災経験が活かされていないと怒り、災害救助法の主体である「県の姿」が見えず、地元自治体の対応が「すべてのことで遅れている」と嘆いていました。
「元の暮らしに
戻す」復旧を
震災は、その都市や地域が抱えている将来的課題を、今の課題にしてしまいます。人口減で弱る自治体力、進む限界集落など。復興どころか、復旧も進んでいない状況でした。「元の暮らしに戻す」支援が求められます。特に被災者の生活再建には、阪神淡路大震災の被災者の運動で成立させた「被災者生活再建支援法」があります。
この法律は地震など災害のたびに充実され、被災者の生活再建に役立つ制度になってきています。野党が「支給額最高600万円、すべての被災者を対象にする改正案」を国会に提案しています。この改正案を成立させ、阪神淡路大震災の被災者の思いが能登の被災者を救うことを祈ります。
能登半島地震と
二つの原発
再稼働と建設計画を凍結させた市民運動に感謝します。能登半島には、今回の地震時に稼働していなかった志賀(しか)原発と、市民運動で凍結を勝ち取った珠洲(すず)原発計画があります。志賀原発は、私が高校の時の校区にあり周辺には友人もいます。地震で陸海空とも交通手段が遮断され、避難ルートは現在も修復工事が行われている能登里山街道です。原発避難計画が全く機能しないことが証明されました。
志賀原発は、再稼働が目前でした。東日本大震災以後、新しい活断層の存在を反対派が提起し、再稼働に反対する運動が繰り広げられていました。
今回の地震で外部電源も内部電源も一時途絶えました。稼働されていれば炉心の冷却ができず、福島原発事故と同じ経過をたどったのではないでしょうか。
珠洲では、建設予定地だった集落は孤立し避難計画が役立たず、しかも予定地の海岸は2mから4mも隆起しました。もし原発ができていれば、配管が破断するだけでなく炉心自体が破壊される大爆発が起こっていても不思議ではない状況でした。志賀原発を再稼働させず、珠洲原発計画を凍結に追い込んだ能登の市民運動に感謝です。
日本では半島や小さな集落などに原発立地が多く集中しています。地震と原発の両立はあり得ません。活断層が無数に走る日本に、原発はあってはなりません。「核と人類が共存することはあり得ない」ということを、能登に行き確信しました。
