
日本の国内総生産(GDP)が、人口が3分の2(8400万人)のドイツに追い抜かれて第4位に転落した。30年前(1993年)の日本の経済規模はドイツの2・2倍以上もあり、10年前(2013年)でも、中国に追い抜かれたとはいえ、ドイツの約1・4倍はあった。それが今回の逆転劇となったが、「失われた30年」で、いったい何がそうさせたのか。
まずドイツの労働環境を見てみよう。この30年でドイツの名目賃金は2・1倍と増えている。年平均労働時間は1295時間。8時間労働、残業なしを基本的には守り、最低賃金は全国一律の1986円。
次に日本だが、名目賃金は30年間で1・1倍と横ばい。年平均労働時間は1626時間。最低賃金は県によって違い897円~1133円。
ドイツと日本のこの違いは政府と大企業の経済政策に基づく。ドイツは国内企業に投資を惜しまず、国内生産と輸出を重要視して着実な経済発展を実現し、これが勝因になっている。一方、日本の大企業は前向きな国内設備投資を抑え、生産拠点を海外に移転した。そうして内需が冷え込んでも利益を確保できるように人件費カットを戦略的に推し進めた。企業は長時間労働と非正規雇用を構造化し、「人への投資」を惜しみ内部留保に終始した。
搾り取られて疲弊した人びとは、購買力や消費能力という側面でも停滞・縮小する以外ない。これらが日本経済の沈没の実態であり、これでGDPが上向くわけがない。GDPは近いうちにインドに追い抜かれるだろう。その後にイギリス、フランスが待っている。
もちろんGDPだけで人びとの豊かさを測るのは間違いだが、次のような指標を見ても、日本が経済だけでなく文化や生活環境などあらゆる側面でも痩せ細っているのは確かだ。
再生エネルギー電力比率(年間発電電力量に占める再生エネルギーの割合)はドイツが52%、日本が22%。食糧自給率はドイツが86%、日本は38%。ジェンダー格差(世界経済フォーラム2023年)はドイツが6位、日本が125位。実に情けない。
労働者に犠牲を強いれば強いるほど、社会全体が疲弊していく。日本政府の「亡国」の政治をこれ以上許してはならない。(森村千春)
