
―4月12日の新聞報道では、「防衛省が、うるま自衛隊訓練場を断念した」とのことですが。場所はどこですか。
うるま市は、沖縄本島の中部の東側です。そこにあるゴルフ場跡地です。
―先月、ミサイルやミサイル発射機などの機材を搬入したと聞きましたが、そこではない?
そうです。うるま市では現在、2カ所で反対運動が行われています(地図参照)。一つはうるま市の南にある勝連(かつれん)分屯地にミサイルが搬入され、分屯地の機能が拡充されることに反対しているもの。もう一つ、マスコミが報道したのは、市の北にある石川ゴルフ場跡に自衛隊が訓練場を作る予定地に反対しているものです。
―自衛隊の思惑は。
自衛隊の幹部はこんなことを言っています。「訓練の度に県外に移動を余儀なくされれば、部隊を増やした意味が薄れる。防衛戦略上、部隊の近くに訓練場を置く意義は大きい」。
「部隊を増やした」とは、22年12月の安全保障関連3文書で那覇市を拠点とする約2千人の第15旅団を「師団」に格上げ、さらに増員する方針を打ち出したことを指します。
―師団化とはなんのことですか。
今、自衛隊では、陸自の作戦部隊は九つの「師団」と、これに準じる六つの「旅団」に大別されています。師団とは旅団より大きい規模、性能を有する作戦部隊なのです。師団化されると2千人規模から3千人規模に膨れ上がるといいます。
―師団なんて、戦前の軍制の名でしょう。
そうです。旅団、師団なんて言う言葉は日常生活では消えたと思っていましたが、また使うようになりましたね。
住民が声をあげた
―話を元に戻しますが、断念に至る大きなきっかけは何ですか。
まあ、自衛隊は場所が悪かったと思ったのでしょう。建設予定地が住宅街に近く、それに公共施設である沖縄少年自然の家の近くだから、地元自治会がまず反対する。次いで15の自治会で構成する自治会協議会が反対した。これが大きかった。それに自民党筋も反対の声をあげた。6月に県会議員選挙があるため、建設賛成では負けると思ったのではなかろうか。それで、2月27日、自民党県連として、この場所に建設することを反対するという姿勢になった。
―では、訓練場はもう造らないのですか。
そうはならないと思います。彼らは場所が悪かったと思っていますから、別な場所を模索しています。防衛相は24年度予算に計上した土地取得費について「しっかりと活用させていただきたい」と言っていますから。
―なるほど、まだ気が抜けないのですね。
ずっと気が抜けません。なにしろ、4月に渡米した岸田総理は、米国議会で「アメリカは先の大戦後の国際秩序を形づくった。自由と民主主義を擁護し、各国の安定と繁栄を促した。必要な時には尊い犠牲を払ってきた」と称え、「今、その国際秩序が危機にさらされている。日本は、すでにアメリカと肩を組んでともに立ち上がっている。アメリカはひとりではない。日本はアメリカとともにある」と言いました。これは、自衛隊を強化するとの宣言です。
4月1日には、戦争の際には円滑に利用できるよう八重山の石垣港と那覇空港が「特定利用空港、港湾」に指定され、整備されることに決まりました。4月24日には、石垣市では自衛隊が公道を使った行軍訓練を行いました。戦争ができる国作りは訓練場だけではなく、いろんな所で行われようとしています。
―琉球列島に今起こっていることは、明日の本土でも起こる事ですね。
そうです。戦争への芽出しは、小さいうちから摘んでおく必要があります。今後とも琉球列島(南西諸島)で起こっていることに注視してください。問題を共有していきましょう。 (富樫 守)
