大阪府の支援学校の卒業式で、「君が代」斉唱時に車いすに座って出席した生徒を見守るために、着席していた教員・奥野泰孝さんに大阪府は戒告処分を出した。4月13日、奥野さんの処分撤回裁判の報告と大阪の教育をめぐるシンポジウムが大阪市内で開かれた。
シンポジウムでは、多彩な意見の交流が行われた。弁護士の池田直樹さんは「公教育は主権者として子どもたちが育つことが目的であり、国はそれを専門職としての教員にゆだねている。着席して生徒に寄り添った奥野さんは、教員としての合理的配慮を行った。それを懲戒処分にするのは間違っている」と話した。
奥野さんは「学校で共に生きるとは、生徒の隣人でありたいということ。共に学ばせてもらったという感じだ。文科省が推し進めている学校改革は、共に生きようとすることを邪魔していると思う。それにたいする闘いが『君が代』強制反対だと思う」と語った。
識字の現場から、はまねさんは「50年ほど前、子どもの入学式に行けなかった。子どもが壇上を走り回るのが恥ずかしかった。でも保育園で何もできなかった子どもが、女の子の手を握ることができた。子どもたちは社会の中で育っていく。お互い支え合う関係が大事」と話した。
骨に異常がある病気で車椅子のリエさんは、「この社会は二本足で歩く人のため、見えている人のためのもの。それがわかると悔しい思いがする。障がいを持った子どもの一番近くにいる大人が先生。A君にとって奥野先生がそばにいたことはどんなに心強かったことか。私は戦争が嫌いだ。いろいろな人が安心して一緒に生きられる社会、重度の知的障がい者が安心して生きられる社会ができれば、戦争を防ぐことができると思う。私たちが生きられない社会は危ない社会。障がい者と健常者が一緒に生きる社会がいい」と話した。
リエさんの連れ合いのまさきよさんは、音声合成ソフトを使ってメッセージ。「脳性まひの67才。教育は子どもの幸福のためにあるのに、今の教育は私が学校に通っていたときよりも、国家や為政者や権力者のためにあるように感じます。戦前戦中の国家主義・軍国主義教育が復活しています。支援学級が増え、地域社会から隔離されたところで教育が推し進められています。共に生きる教育になっているのか問い直さなければなりません。誰もが地域で一緒に学び働き遊びそして生きる。重度の障がいを持った人でも地域で生きられる社会を目指していきたいと思います。手を取り合って生きて生きて生きぬきましょう」と力強く訴えた。
すべての人が安心して生きられる社会を、お互い支え合いながら目指そうというメッセージが伝わるシンポジウムだった。(佐野裕子)