
「大阪市立の高校22校を無償で府に移管するのは地方自治法、地方財政法に違反する」と訴えた裁判は1審、2審とも敗訴した。22年4月1日に15校の土地建物は無償譲渡されてしまったため、15校にたいしては訴訟を取り下げ、23年5月に大阪市長を被告に加えて、一から損害賠償請求を提訴した。残りの桜宮高校、扇町総合高校(西、南、桜和高校は扇町に統合)、東淀川工業高校、水都国際高校は最高裁で争う(現時点で扇町総合と東淀川工業も移管済み)。
この裁判で闘っている大阪市民の財産を守る会が4月11日、大阪市内で報告会を開き、現時点の総括と今後の展望を明らかにした。
都構想から始まった
原告の一人で当日の司会を務めた幸田泉さんは「すべては都構想から始まった」と話した。
都構想の住民投票に勝てると踏んでいた維新は、住民投票の前から市立高校を府立に転換しようとしていた。住民投票で2度も否決されにもかかわらず、維新は府市一元化条例を作って、大阪府が実質的に大阪市を支配している。そして高校無償譲渡が実行されてしまったのである。土地、建物、1500億円という巨額の財産が有償譲渡や貸与の方法もあるのに最初から無償譲渡という方向で進められ、教育面での議論が必要なのに、それもされていない。
幸田さんは語る。「なぜ裁判までしようと考えたのか」と。それは大阪府による市民の財産の乗っ取りだからだ。現在府は強引に府立高校の統廃合をすすめている。市立高校が府立高校になれば、統廃合の波に飲み込まれる。廃校になった土地・建物の売却益が府の財政に入る。
大阪市の財産を他の自治体に譲るには議会の採決が必要だが、それを避けるために大阪市は「大阪市財産条令」を作り、議会にはからずに、松井市長(当時)の裁量で無償譲渡を行ったのだ。
契約解除条項
22年4月に大阪市と大阪府の間で交わされた市立高校15校の不動産を無償譲渡する契約には契約解除条項がある。裁判で無償譲渡契約の違法性が確定すれば契約を解除するというものだ。この条項は「大阪市民の財産を守る会」の訴訟の成果だ。最高裁で逆転勝利し、無償譲渡契約の解除を実現させたい。(堀ちえこ)
