
5月7日、イスラエル軍はガザ地区南部のラファにたいして大規模な地上侵攻を開始した。エジプトと境界にある検問所を封鎖し、ガザ地区への支援物資の搬入を完全に遮断した。ガザは水、食料、燃料、医薬品などあらゆる物資が欠乏し、深刻な状況に陥っている。一方、イスラエルへの抗議デモが全世界で広がっている。米コロンビア大学から始まった反戦デモは全米各地に広がり、5月4日時点で逮捕者は2100人にのぼっている。学生デモは欧州でも拡大している。
こうした緊迫した状況の中、パレチナ問題に積極的に発言を続けているアラブ研究家の岡真理さんが5月3日、滋賀県大津市で開かれた憲法集会で講演した。
二国家共存は不可能
岡さんは「パレスチナ問題の起点はイスラエル建国である」と話す。それは植民地主義と民族浄化とアパルトヘイトである。イスラエルの占領と暴力に対して脱植民地と民族解放を目指す武装闘争は、国際法でみとめられた正当な抵抗権なのだ。
1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間で合意した「二国家共存原則」(オスロ合意)は根本的な問題をはらんでいると岡さんは指摘する。パレスチナの地は紀元前4世紀のヘレニズム文明の集積地であり、様々な民族や宗教が共存していた。パレスチナには多民族多宗教の民主主義国が一つあればそれで十分なのだ。「イスラエルのような植民地主義、レイシズム、アパルトヘイト国家は認められない」と強調した。
続いて、「暴力の3つのタイプ」について言及した。すなわち、相手に直接危害を加える直接的暴力、占領や封鎖といった構造的暴力。そして無知や無関心から直接的暴力や構造的暴力に加担する文化的暴力である。「私たちはガザで起きているジェノサイドを見て見ぬふりはできない。私たち日本人に問われているのは、暴力にたいして今こそ行動するときだ」と訴えた。
講演に続いて、京都在住のパレスチナの女性が発言。「私たちは皆さんと同じ人間であり、数ではありません。夢も喜びも同じなのに、生命を守る抵抗闘争にたいする理解が十分でないのが悲しい。驚くほどたくさんの子どもたちが命と未来を奪われている現実を変えるために、ともに闘ってほしい」と訴えた。(多賀)
