
今年1月22日に、厚生労働省から訪問介護事業所への介護報酬切り下げ方針が公表されました。各方面からの反対を無視し、厚労省は4月から切り下げを強行したのです。
介護保険だけなぜ!?
介護報酬の切り下げだけでもダメージなのに、私たちは利用者さんから「同意書」を得るために走り回っています。介護関係者でない人には、なかなか分かりづらいかも知れません。介護保険では報酬改定があると、そのつど全利用者から同意書を取ることを義務付けられており、私の務める事業所では120人ほどになります。
これは介護事業に対する不当な扱いです。介護報酬とその自己負担額は公定価格です。それは電気代、水道代、公共交通費、郵便料金と同じ類です。電気代、水道料金、ガス代などが、料金変更されるたびにいちいち利用者から同意書を取るという話は聞いたことがありません。この「同意書義務」の廃絶は、介護労働の条件改善の重要なテーマだと思います。
とにかく「同意書取り」は、介護スタッフを疲弊させます。いくつか具体的ケースを紹介すると…。
同意書は、厚労省や自治体が発出した公式文書ではありません。そのため利用者と家族に一度不信感をもたれてしまうと、納得してもらうのがかなり困難。
同意書の統一した書式がないため、複数の訪問介護事業所を利用されている方は、事業所ごとに違う書式の同意書が提示されるので混乱します。
独居の高齢者の場合、親族が遠くにいることが多く、同意書の郵送→電話で説明→返送と、作業が煩雑で、時間がかかります。
同意書取りができるのは、事業所の管理者とサービス提供責任者だけ。人手不足の現状では、休憩時間を削っておこなわざるを得ません。
全部の事業所がそうではありませんが、すべての利用者から集め終るころには、事業所の中心スタッフは疲労困憊しています。しかも今回の同意書は、報酬切り下げというマイナス要因が追加されています。私の所では同意書集めの途中ですが、管理者は「もうやる気しな~い!」と燃え尽きかかっています。(小柳太郎/介護ヘルパー、神戸市)
