梅雨となり食中毒の季節になっています。ここ数年のコロナ禍によりアルコール消毒はかなり普及しましたが、落とし穴もあります。

調理前の石鹸手洗い

消毒用アルコールは公共施設の入り口への設置や携帯スプレーで持ち運べることから、「どこでも使える」という機動性が魅力です。が、手指に消毒効果が発揮されるためには、エタノール濃度が70~80%である必要があります。手が乾いている時はそのままの濃度ですが、水仕事の途中で消毒用アルコールを使用すると、手に残った水分が影響して濃度が下がってしまう場合があります。
また、アルコールはすべての細菌とウイルスを消毒できるわけではありません。典型的にはノロウイルスです。ノロウイルスはエンベロープという脂質を主成分とするパーツを持っていないので、アルコールが効かない特性があります。
手洗いは、 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。石けんやハンドソープ自体にはノロウイルスを直接無効化する効果はありませんが、手の脂肪などの汚れを落とすことで、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
こうした事情で、調理の際には「石鹸手洗い」が基本になります。

手洗い場所の確保

ですが、訪問するお宅によっては、手洗いそのものが難しいケースがあります。洗面台がそもそもついてない、壊れている、使ってないので物が置きっぱなしになっている、などなど。こうしたお宅では、まず手洗い場所を確保するところから作業を始めます。
これは訪問介護に入るヘルパーを守るために必要ということもあります。仮に、利用者が食中毒になってしまった場合、確実にヘルパーにも疑いがかかります。そのときに手洗いスペースすらない状態でサービスしていたとしたら、「アウト」となるでしょう。「アルコールで手を消毒していました」では、保健所は納得しないと思われます。
手洗いは、地味ですが大切な感染予防行動です。新型コロナ感染症が2類から5類になってから感染予防に関してゆるい雰囲気が広がっていますが、現場のヘルパーたちは気を引き締めて業務に当たっています。(小柳太郎/介護ヘルパー)