
朝、「おはようございます」と隣人に挨拶したら、どうも返事が重たい。どうやらウチのネコが植木におしっこをしたらしい。スミマセン! と掃除をして「いえいえ」でお互い笑顔で終わる▼2、3軒むこうの人はゴミ袋が重たそう。「持ちましょう」「おおきに」と、ゴミ出しの朝はこんな「外交」で始まる▼人びとが会話をしなくなったのは、いつ頃だろう。私の記憶では、バスがワンマンになった頃だ。「降ります!」と叫ばなくても、手元のボタンを押せば合図になる。「降りまっせ。通してや」「おばさん、えらい荷物やな」。そんな会話はバスの中では、もうない。無言で「ピンポン」を押せばよい▼今世紀、こうも世界中が戦争へと走るのは、対話という面倒なことへの努力がなくなったからだ。ワンマンカーに責任はないが、特に通信機器の発達は人びとの「肉声」を取り上げてしまった。世界はウムを言わさぬ殺戮兵器の製造に走る。それを止めるのは対話、外交しかないのだが。(侑)
